三
寒い
夜のことでした。
山にすんでいるきつねはもう
山には
餌がなかったので、
里へ
出てなにか
探してこようと
野原の
上を
歩いてきました。きつねは
村へいって
鶏の
小舎を
襲おうと
思っていたのです。
「おお、
寒い。」と、きつねはつぶやいて、
空を
向いて、
太い
息をしました。
「この
寒いのに、どこへゆくのですか?」と、
星はたずねました。
「
山に
食べるものがなかったから、
里へいって
鶏でも
捕ってこようと
思うのだ。」と、きつねはめんどうくさそうにいいました。
星は、びっくりしました。しかし、きつねは、なかなか
年をとっていて
狡猾でありましたから、
星はちょっとだますことはできないと
思いました。
「
今夜あたり、
狩人が
寝ずに
番をしているかもしれない。」と、
星はささやきました。
きつねは、これを
聞いてせせら
笑いをしました。
「なんで
狩人が、
鶏の
番などをしているものか。」といいました。
「おまえさんは、
鶏小舎の
在り
場を
知っているのですか。」と、
星はきつねに
問いました。
「なに、
村の
中をうろついてみればすぐわかることだ。」と、きつねは
答えました。
星は、
目もとに
笑いをたたえて、
「そんなことをして、うろついていると、
狩人に
撃たれてしまいますよ。それよりここに、もうしばらく
待っておいでなさい。やがて
鶏が
鳴く
時分です。そうしたら、じきにその
小舎を
見つけることができます。
辛棒が
肝心です。」と、
星は
諭すようにいいました。
「そうしようか。」と、ものぐさなきつねは
村の
方を
見て、そうすることにしました。そしてじっと
耳を
澄ましていました。その
夜は
雪こそ
降らなかったが、いつにない
寒い
夜でありました。きつねはもう、なんとも
我慢をすることができなくなりました。
「
早く、
鶏め
鳴かないかなあ。」と
思っていますうちに、
間近の
黒い
森の
方で、
犬のなく
声が
聞こえました。きつねは、びっくりしました。
「そら、きつねさん、
私のいわないことではありません。
狩人の
犬ですよ。」と、
星はいいました。
きつねは、あわてて
起とうとしましたが、
尾が
雪の
上に
凍えついてしまって、どうしても
取れませんでした。やっとの
思いで、
痛いめをして
引き
離すと、きつねは
空しく
山の
中へ
駆け
込んでゆきました。
分享到: