「やはり、お
家においてかわいがってやればよかったんだ。かわいそうなことをしたなあ。」と
思っていると、そとから、
「
敏ちゃあん!」と、
仲よしの
徳ちゃんのよぶ
声がしました。
「いま、いくよ!」
敏ちゃんは
急に
元気になってとびだしました。
あちらで、カチカチという
紙芝居の
音がきこえていました。
「
徳ちゃん、カチカチカチだよ。」
「カチカチなら、
聞こうよ。いいおじさんだものね。」
「ああ、ドンドンなんか、これから
聞くのをよそうよ。」
二人は
紙芝居のひょうし
木の
音のするお
宮のけいだいへ、
急いでいきました。
二人は、カチカチとひょうし
木をたたいてくる
紙芝居のおじさんと、ドンドンとたいこをたたいてくるおじさんの
二人について
話したのであります。この
二人のおじさんは、いずれもじてん
車にのってきました。カチカチのほうは、
黒い
目がねをかけ、せびろの
洋服をきてパッチをはき、くつでありました。ドンドンのほうは、
白いシャツに
長いズボンをはき、
板ぞうりに
帽子をかぶっていました。
カチカチは、このあいだ「ゆかいなピンタン」をやりました。ドンドンは「ねこ
娘」をやりました。どちらもお
話が
上手でしたが、カチカチはかえるときに、「ありがとうございます。」といって、かえりました。
ドンドンはだまって、すうっといってしまいます。また、カチカチは
子供が
高いところからおちてころぶと、すぐにかけてきて、「なんともなかった?」と、やさしくききました。そしてその
子供が
泣いていると、お
金をやらなくても、あめをくれたのであります。これを、
二人は
見て
知っていました。
「あのカチカチのおじさんは、いいおじさんだね。」と、
敏ちゃんがいうと
「やさしい、いいおじさんだなあ。」と、
徳ちゃんもいったのです。
「ドンドンは、
小さい
子がころんでも、
知らん
顔をしているね。」
「
泣くと、あっちへいけというだろう。あんな
人は
悪いおじさんだね。」
「
僕、カチカチすきだ。」
「
僕も。」
こういってから、
二人はカチカチのひいきとなったのでした。
「
黄金バットかな。」
「そうかもしれないよ。」
カチカチのおじさんは、もうはじめていました。
「たこ
坊主のおかみさんに、どうぞ
夫の
仇をうってくださいとたのまれる、ヨシ、そんなら
私が
仇をうってやろうと、かっぱの
親分は、さっそく
子分をよびあつめて、
水をくぐってみつからないように、
摩天楼に
近づくように
命じました。
早くもそれを
感じてノラクロは、このことをアグチャンに
報告したのであります。」
お
宮のけいだいにあつまっている
子供たちは、ねっしんに
聞いていました。
お
話がすむと、
徳ちゃんが、「
敏ちゃん、おいでよ。」といったので、
敏ちゃんは
徳ちゃんのお
家へ
遊びにいきました。
徳ちゃんのお
家はあらもの
屋でした。おばさんはいい
人で、
徳ちゃんにやさしかったのです。また、おばさんはねこがすきで、
黒い
大きなねこがいました。そのねこをおばさんは、たいそうかわいがっていました。
「こいつは、ずるいやつだよ。」と、
徳ちゃんがいいました。
おばさんのいるときは、おとなしくしているけれど、おばさんのいないときには、よく
悪いことをするのだそうです。
ちょうど、おばさんのいるときでした。
黒ねこはおとなしくねむっていました。
敏ちゃんがだくと、やっとだけるほど
重かったのでした。しかし、なにをしても
目をほそくして、「ニャア。」とないていました。
今日、
遊びにいくと、ちょうどおばさんはるすでした。
敏ちゃんが、あちらにねむっている
黒ねこをよんでも、ふり
向かないのであります。
徳ちゃんが
大きな
声を
出してよぶと、あちらを
向いたままで
太い
尾を
動かして、ちょっとたたみをたたいたばかりでした。
「
子供だと
思って、ばかにしているのだね。いまに、ばけねこにばけるかもしれないよ。」
「ああ、なかなかわるいやつだよ。このあいだ、お
母さんが
仏さまにあげておいたあんパンを一つ
食べたのだよ。お
母さんは、
僕が
食べたというんだもの。いくら
僕でないといっても、お
母さんは、ほんとうにしないのだ。こいつが
食べたのだよ。」
「おばさん、どこかへいったの?」
「お
使いにいったんだろう。」
二人は、ちょっとたいくつしました。
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