めくら星(2)
日期:2022-08-08 23:57 点击:246
また、このとき、
水の
中から、
先刻と
同じ
声で、
「
姫、
姫、どの
星になる。
金の
星か。
銀の
星か。それとも
紫色の
星か。」と、
姿が
見えないけれど、
同じことをいいました。
娘は
考えて、
「
金の
星になる。」と
答えました。すると、
「
金の
星は
早いぞ。
早く
出て、
遅く
入る。」と、また
水の
中からいいました。
娘は、これは、
金星は、
早く
空に
出て、
遅く
海に
入るのだから、
早く
池の
中に
飛び
込めというのだろうと
思いましたから、さっそく
手を
合わせて、
神さまに
祈りながら、ざんぶりとばかり、
水の
中に
身を
投げ
込んでしまったのであります。
その
夜から、
空に、
金色の
新しい
星が一つ
増えました。
けれど、その
星は、めくら
星でありました。ほかのお
星さまのように、
遠く、
高く、
地から
離れて、
天上界に
住むことができないのであります。
毎夜、
森や、
林や、
野の
上近くさまよって、このお
星さまは、なにか
探ねています。それは、
死んだ
姉が、なお、
弟のかわいがっていた
鳥を
探しているのであります。
ある
日のこと、
山や、
森や、
林や、
河は、みんないっしょに
集まって
相談いたしました。
「あのめくらの
星は、ほんとうにかわいそうだ。」
「
毎夜、この
下界の
近くにまで
降りてくる。もし、
山や、
森に
突きあたったらどうするつもりだろう。」と、
彼らはたがいに
話し
合いました。
「こりゃ、おれたちが、あの
星に
注意してやらなけりゃならない。」
「そうだ。それがおれたちのすべきことだ。」と、
彼らは、またいいあいました。
相談がすむと、
彼らはたがいに
別れてしまいました。
どんな
晩も、
雨の
降らないかぎりは、めくら
星は、
金色に
光って、
下界に
近く
空をさまよいます。みなさんは、
金色に
輝くお
星さまが、
山の
頂にとどきそうになって
過ぎるのを
見るでありましょう。そのとき、ふもとの
谷川は、
声をかぎりに
叫びます。また、
森には、
風が
起こって、ゴーゴーと
鳴ります。ある
山は、
赤い
火を
噴いて、
星に
警戒します。
めくら
星は、
高い
山の
頂につきそうになって、この
物音を
聞きつけて、さも
寒そうに
身ぶるいしながら、
青い
青い
夜の
空をあてもなく、
無事に
過ぎてゆきます。
神さまは、めくら
星となった
娘を、かわいそうだと
思われました。けれど、
逃げた
小鳥にべつに
罪のあるわけでありませんから、それを
罰することができませんでした。ただ、めくら
星が
毎夜、
地に
近く
降りて
鳥を
探しているのを
不憫と
思われて、これはいくら
探してもわかろうはずはないから、
逃げた
鳥は、ほかの
鳥のように
昼間はないたり、さえずったりさせずに、
夜にかぎってないたり、さえずったりさせてやろう。そうすれば、めくら
星はきっと、そのなき
声を
聞きつけて
探しあてることができるだろうと、
神さまは
思われたのであります。
森に、
山に、
林に、みんなほかの
鳥は
昼間太陽の
輝いている
間は、おもしろく、
楽しく、こずえからこずえにさえずり
渡っているのを、
独り、
昼間は
眠って、
真っ
暗な
夜の
間眠ることができずに、
反対にないている
鳥があります。これは、
昔、かごから
逃げていなくなった
鳥の
子孫らであります。しかし、めくら
星は、
永久に
森の
中に
近づくことができません。
空しく、はるかにほととぎすや、ふくろうのなき
声を
聞きながら、
高い
山の
頂を
過ぎるのです。
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