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一本の釣りざお(4)
日期:2022-09-01 23:23  点击:334
 

四


 金かねが入はいると、甲こうは、いままでのようにじっとしていることができませんでした。上等じょうとうの網あみを買かいました。また、いい着物きものをみんなが買かいました。また、町まちへ出でて見物けんぶつに歩あるきました。
「金かねがなくなったら、また働はたらくばかりだ。」と、甲こうはいいました。
 そのうちに、真珠しんじゅを売うった金かねは、すっかりなくなってしまいました。甲こうは、ふたたび乙おつといっしょに海うみの上うえへ出でて働はたらくことになりました。けれど、昔むかしのように、おちついて釣つりをしたり、網あみを打うったりしていることができなかった。魚さかながとれると、かたっぱしから腹はらを割わって見みていました。そして、真珠しんじゅをのんでいないと、みんなその魚さかなの屍かばねを海うみの中なかにほうりこんでしまいました。
「甲こうさん、なんでそんな乱暴らんぼうなことをするんですか。」と、乙おつはびっくりしていいます。
「今度こんど、真珠しんじゅを見みつけたら、その金かねで町まちへ出でて商売しょうばいをするのです。もう、私わたしは、魚さかなとりなんか問題もんだいにしていない。」といって、ところかまわず網あみを打うちました。けれど、もう二度どと真珠しんじゅをのんでいる魚さかなはなかったのです。
 甲こうは、とうとう自分じぶんのおろかなことがわかる日ひがきました。そして、おちついて魚さかなをとって、それをばまた町まちに売うって生活せいかつをしたときには、まったく昔むかしにもまさる貧乏びんぼうになって、上等じょうとうの網あみに破やぶれめができたときです。
 乙おつは、さおを大事だいじにして釣つりをしました。そして、甲こうの恩義おんぎを長ながく感かんじて、甲こうの困こまったときは助たすけてやりましたので、甲こうはいまさらながら、一本ぽんの釣つりざおを貴たっとく思おもったのであります。

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09/29 07:34