一本の釣りざお(2)
日期:2022-09-01 23:23 点击:302
二
ある春の日のことでありました。陸には、桜の花の咲く時分でありました。二人は、北の青い海の上に出て釣りをしていました。たいがかかる時分でありました。いくら二人は、こうしていっしょうけんめいになってたいを釣っても、それを自分たちが食べることはできなかった。みんな町の魚屋に売ってしまって、その金で家族のものを養わなければならなかったのです。
「ほんとうに、俺たちは、こうして毎日たいをとっても自分たちの口に入らないのは、考えると、つまらないことだ。今日はひとつ自分が料理をして子供らにたべさせてやろう。」と、甲がいいました。
「ほんとうに、そうだ。私も、家に帰ったら、ひとつ料理をして子供や妻に食べさしてやろう。」と、乙がいいました。
その日二人は、海から働いてたがいに家に帰りました。そして、甲も乙も、自分たちのとった大だいを一尾ずつ料理をしました。すると甲のほうのたいの腹から小指の先ほどの真珠が飛び出したのであります。
「これはたいへんなものが出た。」といって、甲は喜んでおどりあがりました。そして、家じゅうのものは大騒ぎをしました。
甲は、さっそく乙のところへやってまいりました。それは、乙のところのたいからも真珠は出なかったかと聞きにきたのであります。すると、乙は、甲のために喜んでいいました。
「甲さん、そんないいことはめったにあるもんでない。おそらく、あとのたいをみんな腹を割ってみたって、もうこのうえ真珠が入っているものでない。これは神さまがあなたにお与えなさったのです。」といいました。
甲は、こう聞くといっそう喜んで家に帰りました。
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