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一本の銀の針(2)
日期:2022-09-01 23:23  点击:312
 


 おじいさんは、まごがいよいよ船出ふなでをするというので、よるもおそくまできていて、ふねっていました。どんなつよかぜたってもけぬように、またどんなにあめなみにぬらされても、やぶれぬようにと、ねんねんをいれてつくっていました。
 いもうとは、にいさんといっしょになって、船出ふなでゆるしをおじいさんにたのんだものの、あにうえあんじられてしかたがありませんでした。
「どうかして、にいさんが無事ぶじに、ていってかえってこられるように。」と、いのったのであります。
 そのも、いもうとは、あにのことを心配しんぱいしながらみちあるいてくると、さびしいところに小川おがわながれていて、そこに、せまはしがかかっており、一人ひとりのおばあさんが、そのはしわたることができずにこまっていました。
 だれも、ひととおらなかったので、だいぶながあいだここに、こうしておばあさんはっているものとおもわれたのであります。
 いもうとは、そのおばあさんをるとどくになりました。自分じぶんがどうかしてでもいてわたらせてあげようと、そばへいってみますと、おばあさんは盲目めくらでありました。
 いもうとは、びっくりしました。こんな盲目めくらがどうして、このあたりまで一人ひとりでやってこられたろうかとおもわれました。
「どんなにか、おばあさん、おこまりでしたでしょう。わたしいてあげます。」と、いもうとはいいました。
 すると、盲目めくらのおばあさんは、
「どうかおぶって、わたしておくれ。」と、それがあたりまえであるというような調子ちょうしこたえたのです。
 いもうとは、ずいぶん横着おうちゃくなおばあさんだとこころおもいました。また自分じぶんがおぶっては、あぶなくてわたられないからでした。
「おいてあげましょう。」
「いいえ、おぶってもらいましょう。」と、おばあさんは、かしらっていいました。
 いもうとはしかたなく、苦心くしんをして、そのおばあさんをおぶって、ようようはしわたることができました。すると、盲目めくらのおばあさんは、もうしろくなったかみさぐって、そのなかから一ぽんぎんはりしました。
「このはりは、不思議ふしぎな、どんなねがいごともかなうはりだから、これをおまえさんにおれいとしてあげる。けっして、みだりに他人たにんにやったり、せたりしてはならぬ。」といって、おばあさんはぎんはりいもうとにくれました。
 いもうとは、よろこんでうちかえりました。そして、そのばんに、おじいさんがうてつだいをして、おばあさんからもらったぎんはりで、どうかにいさんが無事ぶじかえってきてくださるようにといのりながらいました。ほそぎんはりでは、あつきれがよくとおりそうもないのに、よくとおりました。不思議ふしぎはりだから、きっとおじいさんのつくってくださったは、けっして、かぜにも、あめにも、やぶれないであろうとおもいました。
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