あかい雲
小川未明
(一)
あかい雲、あかい雲、
西の空の紅い雲。
おらが乳母のおまんは、
まだ年若いに、
嫁入りの晩に、
海の中に落ちて、
あかい雲となった。
(二)
おまん、おまん、
まだ年若いに、
あかい紅つけて、
あかい帯しめて、
からこん、からこん、
げたはいて、
西のお里へ嫁にいった。
あかい雲、あかい雲、
西の空の紅い雲。