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子供と馬の話(2)
日期:2022-11-01 16:52  点击:293
 やがて、そのひとたちは、あつくおれいをいって、またみちあるいてゆきました。
「あんなような子供こどもがあっては、汽車きしゃるのが、どんなにほねおりだかしれません。」
かれらのったあとで、みんなは、そのひとたちの停車場ていしゃばいてからさきのことなどを想像そうぞうして同情どうじょうしたのでありました。
ひるから、よるとなく、つづいた避難ひなんするひとたちのれも、さすがに、真夜中まよなかになると、いずれも、どこかに宿やどるものとみえて、往来おうらいがちょっとのあいだはとだえるのでした。
そらあおぎますとあまがわが、下界げかいのことをらぬかおに、むかしながらのままで、ほのぼのとしろながれているのでありました。
「もう、何時なんじごろでしょうか。」
「二をすこしぎました。」
あたりは、しんとしていました。このとき、あちらから、やまなりに荷物にもつんで、荷馬車にばしゃがやってきました。
その荷車にぐるまいているのは、しろうまでありました。そして、さきって、手綱たづないているおとこは、からだのがっしりした大男おおおとこでありました。うまも、おとこも、だいぶつかれているようにえたのであります。
太郎たろうのおとうさんは、これをて、
「どこからきたのですか、よほど、とおいところからきなされたとみえますね。」と、やさしくこえをかけられました。
ゴト、ゴトとおも荷車にぐるまうまかせてきたおとこは、手綱たづなをゆるめてまりました。
横浜よこはまから、今日きょうひるごろかけてまいりました。これから、もう一さきへゆかなければなりません。うまもだいぶつかれています。」とこたえました。
「そうとも、ここから横浜よこはままでは、十あまりもありますからね。」
「六郷川ごうがわ仮橋かりばしわたってきなすったのですね。」
「ええ、そうです。また、この荷物にもつろして、すぐに、今夜こんやのうちにかえるつもりです。」と、うまいてきたおとこはいいました。
「また、とおみちかえるのですか。」
「あすの晩方ばんがたに、あちらへきます。そして、あさっては一にちうまやすめます。」と、おとこは、こたえました。
夜警やけい人々ひとびとは、このはなしいて、人間にんげんも、うまも、どんなにつかれることだろうとおもいました。
こんなことは、平常ふだんおおくあることでありません。汽車きしゃとおっていれば、汽車きしゃ運搬うんぱんされるのです。こうした、変事へんじがあったときは、みんながたすったり、ほねをおらなければならないのであります。
おとこは、また、手綱たづないて、ゆこうとしました。すると、うまは、もうだいぶつかれているものとみえて、じっとして、あるこうといたしませんでした。もっとこうして、やすんでいたいとおもったのでありましょう。
しかし、いつまでも、おとこはそうしていることができないのをっています。やすめば、やすむほど、つかれはてきて、だんだんあるけなくなるものだからです。
「ど、ど、さあ、あるくだ。」とおとこは、うまこころからいたわるように、やさしくいいました。
このとき、おとこは、けっして、うまをしからなかったのでした。ひとり人間にんげんだけではなく、うまでも、うしでも、感情かんじょうかいするものは、しかるよりは、やさしくしたほうが、いうことをきくものです。
うまは、また、おも荷車にぐるまいてあるいてゆきました。
「こんなときは、うまもなかなかほねおりだ。」と、そのとき、太郎たろうのおとうさんといっしょに夜警やけいをしていたひとたちはかんじたのであります。
翌日よくじつのことでした。太郎たろう二郎じろうとが、またちょっとしたことから、けんかをはじめましたときに、おとうさんは、昨夜ゆうべた、あわれな子供こどもらやとおいところからあるいてきたうまはなし二人ふたりにしてきかされました。
「かわいそうなひとたちのことをおもったら、けんかどころではないだろう。」と、いわれましたときに、二人ふたりは、ほんとうに感心かんしんをいたしました。
太郎たろう二郎じろうは、自分じぶんのいままでんでしまってかさねておいた雑誌ざっしや、書物しょもつや、またおもちゃなどを不幸ふこう子供こどもたちにあげたいとおとうさんにもうしました。
「それは、いいかんがえだ。」とおとうさんはうなずかれました。そして、二人ふたりは、またおとうさんにかって、
しろいおうまは、もうおうちかえったでしょうか。」と兄弟きょうだいは、一にちあいだいくたびもおもしては、いていたのでありました。
 

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