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こまどりと酒(2)
日期:2022-11-01 16:55  点击:284
 おじいさんは、さけきでしたから、せっかくってきたものをとおもって、さっそく、徳利とくりってすぐにみはじめたのであります。
さけむと、おじいさんは、ほんとうに、いい気持きもちになりました。いくら、いえそとで、さむかぜいても、ゆきっても、おじいさんはのかたわらでさけんでいると、あたたかであったのです。
さけさえあれば、おじいさんは、さむ夜業よなべまでしてわらじをつくることもしなくてよかったので、それからよるはやくからとこにはいってねむることにしました。おじいさんはねむりながら、吹雪ふぶきまどにきてさらさらとたるおといていたのであります。
くるあさ、おじいさんは、をさましてから、戸口とぐちて、はしらますと、昨日きのうから徳利とくりけておいたのに、いつのまにか、その徳利とくりなかには、さけがいっぱい、はいっていました。
「こんなにしてもらっては、どくだ。」と、おじいさんは、はじめのうちはおもいましたが、いつしか毎日まいにちさけのくるのをつようになって、仕事しごとは、はやかたづけて、あとは、のかたわらでちびりちびりとさけむことをたのしみとしたのであります。
あるのこと、おじいさんははしらのところにいってみますと、から徳利とくりかっていました。
「これは、きっと小僧こぞうさんがわすれたのだろう。」とおもいました。
しかし、その翌日よくじつも、その翌日よくじつも、そこには、から徳利とくりがかかっていました。
「ああきっと、ながあいださけをくれたのだが、もうくれなくなったのだろう。」と、おじいさんはおもいました。
おじいさんは、また、自分じぶんからはたらいて、さけわねばならなくなりました。そこで、よるはおそくまで、夜業よなべをすることになりました。
「なんでも、他人たにんちからをあてにしてはならぬ。自分じぶんはたらいて自分じぶんむのがいちばんうまい。」と、おじいさんは、ったのであります。
しばらくたつと、酒屋さかや小僧こぞうがやってきました。
「じつは、せんだってまたこまどりが、どこかへげてしまったのです。もう、ここへはやってきませんか?」といいました。
おじいさんはそれで、はじめてもうさけってきてくれないことがわかったようながしました。
「どうして、大事だいじなこまどりを二がしたのですか。」と、おじいさんはあやしみました。
「こんどは、主人しゅじんが、ぼんやりかごのけたままわきをしているうちに、そとげてしまったのです。」と、小僧こぞうこたえました。
「それが、もし、おまえさんががしたのならたいへんだった。」と、おじいさんは、わらって、
「どんな人間にんげんにも、あやまちというものがあるものだ。」といいました。
おじいさんは、毎晩まいばんよるおそくまで仕事しごとをしたのであります。またおりおり、ひどい吹雪ふぶきもしたのでした。
おじいさんはうすくらいランプのしたで、わらをたたいていました。吹雪ふぶきがさらさらと、まどたるおとこえます。
「ああ、こんやのようなばんであったな。こまどりが吹雪ふぶきなかを、あかりをあてに、んできたのは。」と、おじいさんはひとごとをしていました。
ちょうど、そのとき、おりもおりまど障子しょうじにきてぶつかったものがあります。バサ、バサ、バサ……おじいさんは、その刹那せつな、すぐに、小鳥ことりだ……こまどりだ……とおもいました。そして、いそいで障子しょうじけてみますと、まどなかへ、小鳥ことりびこんできて、ランプのまわりをまわり、いつかのように、わらのうえりてまりました。
「こまどりだ!」と、おじいさんはおもわずさけんだのです。
おじいさんは、このまえにしたように、また、かごのいたのをってきて、そのなかにこまどりをうつしました。それから、ゆきって、青菜あおなり、また川魚かわざかないたのをすったりして、こまどりのためにつくってやりました。
おじいさんは、そのこまどりはいつかのこまどりであることをりました。
そして、それを、酒屋さかや小僧こぞうわたしてやったら、主人しゅじんがどんなによろこぶだろうかということをりました。
そればかりではありません。おじいさんは、このこまどりを酒屋さかやへやったら、先方せんぽうは、またおおいによろこんで、いままでのように、毎日まいにち自分じぶんきなさけってきてくれるにちがいないということをりました。
おじいさんは、どうしたら、いいものだろうとかんがえました。
こまどりは、おじいさんのところへきたのを、うれしがるようにえました。そして、そのくるからいいこえして、いたのであります。
おじいさんは、このこまどりのごえきつけたら、いまにも酒屋さかや小僧こぞうんでくるだろうとおもいました。
さむい、さびしかった、ながふゆも、もうやがてこうとしていたのであります。たとえ吹雪ふぶきはしても、そらいろに、はや、はるらしいくもが、晩方ばんがたなどにられることがありました。
「もう、じきにはるになるのだ。」と、おじいさんはおもいました。
やまから、いろいろの小鳥ことりが、さとてくるようになりました。ひかりは、一にちましにつよくなって、そらたかかがやいてきました。おじいさんは、こまどりのかごをひなたにしてやると、さも広々ひろびろとした大空おおぞらいろをなつかしむように、こまどりはくびをかたむけて、まりにとまって、じっとしていました。
「ああ、もうはるだ。これからは、そうたいした吹雪ふぶきもないだろう。むかしひろ大空おおぞらんでいたものを、一しょうこんなせまいかごのなかれておくのはかわいそうだ。おまえは、かごからそとたいか?」と、おじいさんは、こまどりにかっていっていました。
こまどりは、しきりに、そと世界せかいあこがれていました。そして、すずめやほかの小鳥ことりが、えだにきてまっているのをて、うらやましがっているようなようすにえました。
おじいさんは、酒屋さかやへいってかごのなかにすむのと、また、ひろ野原のはらかえって、かぜや、あめなか自由じゆうんですむのと、どちらが幸福こうふくであろうかと、小鳥ことりについてかんがえずにはいられませんでした。
また、さけきなおじいさんは、この小鳥ことり酒屋さかやっていってやれば、これから毎日まいにち自分じぶんは、夜業よなべをせずに、さけまれるのだということをもおもわずにはいられませんでした。しかし、おじいさんはついに、こまどりにかって、
「さあ、はやくにげてゆけ……そして、人間にんげんつかまらないように、やまほうとおくゆけよ。」といって、かごのけてやりました。
もう、気候きこうあたたかくなったのでこまどりは、いさんで、夕暮ゆうぐがたそらを、ちるほうかってんでゆきました。そののちまた、吹雪ふぶきはありましたけれど、こまどりは、それぎりかえってはきませんでした。
 

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