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サーカスの少年(1)
日期:2022-11-03 23:57  点击:292

サーカスの少年

小川未明


かがやかしいなつのことでありました。少年しょうねんが、そとあそんでいますと、はなかざられた、ひつぎをのせた自動車じどうしゃが、往来おうらいはしってゆきました。そして、みちうえへ、一枝ひとえだしろはなとしてったのです。
これをつけた子供こどもたちは、方々ほうぼうから、はしりましたが、いちばんはやかった少年しょうねんが、そのはなひろったのでした。なんというはなか、わからなかったけれど、それは、においのたかいみごとなはなでありました。
ひろわれなかった子供こどもたちは、うらやましそうに、そのはなて、残念ざんねんがりました。
「おとむらいのはななんかひろって、縁起えんぎがわるいな。」と、一人ひとりがいうと、
「いくら、きれいなはなでも、ひろうもんでないね。」と、一人ひとりが、あいづちをうちました。
「なんだ、自分じぶんたちだって、ひろおうとおもって、けてきたんじゃないか。なにが、はなひろったって、縁起えんぎわるいもんか……。」と、少年しょうねんは、大事だいじそうに、そのはなってゆきました。
しかし、そういわれると、なんだか、いい気持きもちがしませんでした。だいいち、ほとけさまになったひとにあげたはなひろっていいものか、かんがえれば、わるいようなもしたからです。
おじいさんが、やなぎしたで、アイスクリームの屋台やたいして、つくねんと、こちらをわらっていました。少年しょうねんは、おじいさんに、このことをいてみようとおもいました。
「ねえ、おじいさん、お葬式そうしき自動車じどうしゃからちたはなひろっても、わるいことはないね?」と、いました。
おじいさんは、ちょうど、おきゃくもなく、先刻せんこくからようすをていましたので、なにもかもっています。
「ああ、わるいことも、なんともないよ。どうせ、だれかひろわなければ、ひとまれたり、くるまにひかれて、めちゃめちゃになってしまうのだもの。それをひろって、びんにさしてやれば、まだ、はなられるのだから、ほとけさまだって、およろこびなされるよ。」と、こたえました。
それをくと、少年しょうねんは、きゅうに、うれしくなりました。
ほとけさまになられたひとは、どんなひとだろうね。」
「そうだな。うつくしい、やさしいむすめさんであったかもしれないな。」

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