酒倉(2)
日期:2022-11-03 23:59 点击:248
下
今度は
甲の
国が
勝ちつづけて、その
軍勢は、
国境を
越えて
乙の
国へ
侵入したのであります。
ある
日のこと、
甲の
軍勢は
乙の
国のある
村を
占領いたしました。その
村の
人々は、すでにどこへか
逃げてしまって、
村にはまったく
人影が
見えなかったのです。たまたま
家を
失った
犬がその
辺をうろついている
姿を
見ますばかりで、
豚も、
鶏も、
馬も、
牛も
見なかったのであります。それは、
村人が
逃げるときに
敵に
渡すのを
惜しんで
連れていったり、また
殺して
焼き
捨ててしまったりしたのであります。
甲の
国の
大将は、このさびしい
火の
消えたような
村の
中を
見まわりました。どこかに
食べ
物が
隠してないかと
思ったのであります。けれどどこにも、
食糧品がなかったのです。
大将は
微笑みました。そうして
心の
中でいったのです。
「ははあ、これは、いつかおれが
敵を
困らしてやった
策略をそのまま、おれに
当てはめようとするのだな。ばかなやつらめ。」と、
見まわって
歩きました。
すると、
草原の
中に、ただ
一人の
少年がすわっていました。
太陽の
光は、その
少年の
頭を
熱そうに
照らしています。
「おまえは、そこでなにをしているのだ。」と、
大将は
少年に
声をかけました。
「
私は、びっこです。みんなといっしょに
逃げることができませんから、しかたなくこうしています。」と
答えました。
「おまえは、どの
井戸や、
酒倉に
毒を
入れたか
知っているにちがいない。それを
教えればよし、
教えないと
承知をしないぞ。」と、
大将はいいました。
少年は、この
村の三
軒の
酒倉だけには
毒が
入っているが、ほかは
毒が
入っていないと
告げました。これを
聞いた
大将は
考えていましたが、やがてみんなに
命令を
下して、
「みんなは三
軒の
酒倉の
酒を
飲め、そのほかは、どれも
毒が
入っているぞ。」と
叫びました。
兵士たちは
争って、その三
軒の
酒倉へ
飛び
込みました。
大将もいって
酒を
飲みました。そして
一人残らず
死んでしまいました。
少年は、うそはいわなかったのであります。
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