二
「
磁石に、
電気をかけると、
強くなるってほんとう?」
敏ちゃんは、
小山のいったことを
義ちゃんにききました。
義ちゃんは、
敏ちゃんよりは、一
年上の
組です。
「ほんとうさ、
電車の
通ったすぐ
後へ、レールに
磁石をつけると、
電気がかかって、
強くなるのだよ。
僕たち、これからいくのだが、
君もいかない?」と、
義ちゃんは、いいました。
「レールに、
磁石をつけるの?」
日ごろ、お
母さんに、
電車道へいって、
遊んではいけないと、
堅くいいきかされているので、それが
頭に
浮かぶと、
敏ちゃんは、どうしようかと
返事に
迷いました。
「すぐ、レールにつけなければ、だめなんだよ。
僕たち、
冒険をして、
電気をかけにいくのさ。」
「
武ちゃんと?」
「ああ、あまり
小さいものは、
危ないけど、
君もいっしょにおいでよ。」と、
義ちゃんは、すすめました。
もし、お
母さんに
知れたら、しかられると
思ったが、
義ちゃんが、
「かつ
子さんだって、くるのだから。」といったので、
弱虫と
思われては、いけないと
思って、
「
僕もいく。」と、
敏ちゃんは、
約束しました。そして、ポケットから、
大きな
磁石を
出して、ながめていますと、
「お
見せ、
大きいのだね。これに
電気をかけたら、ものすごくなるよ。
鉄びんでも、なんでも
持ち
上げるだろう。だけど、
赤いところがはげているから、じきに
力が
弱くなってしまうね。でも、
大きくて、すてきだなあ。」
義ちゃんは、
敏ちゃんの
磁石を
見て、うらやましがりました。そして、
手に
取って、つくづくとながめていました。
午後から、おおぜいで
電車道へ
出かけたのです。
彼らは
地を
震動して、
電車が
通過するたびに、
飛び
出していっては、レールにめいめいの
磁石を
押し
当てていました。その
間、
女の
子供たちは、
左や
右を
見張っていました。
遠くからトラックや、オートバイの
影が
見えると、
「あっちから、きた!」と、
注意をしました。
みんなが、いつも
遊ぶ
原っぱへもどってきてから、
磁石の
試験をしてみたけれど、その
力には、
前とすこしの
変わりもなかったのです。
義ちゃんや、
武ちゃんの
磁石は、やはり
敏ちゃんの
大きな
磁石よりは、ずっと
力が
強かったのでした。
晩方、
敏ちゃんは、ラジオ
屋のおじさんのところへきました。そして、
電車のレールから、
電気を
取った
話をしました。
色の
黒い、
口ひげの
生えたおじさんは、
目をまるくして、
敏ちゃんの
話をきいていましたが、
「あぶないな、
過ってひかれでもしたら、どうするつもりだ。なんで、そんなことで
電気が
取れるものか。どれ、おじさんが、
磁石に
電気をかけてやるから、もう、あぶないまねをしてはいけないぜ。」と、
諭しました。
おじさんは、ラジオの
針金をぎりぎりと
敏ちゃんの
磁石に
巻きました。つぎに、その二
本の
線の
端を
電池の
端子に
結びつけました。すると、
電流が
通じて、
青い、
美しいが
火花が
散りはじめました。
「ああ、これぐらいでいいだろう。これなら、たくさん
砂鉄が
食いつくぜ。」と、
人のよいおじさんは、
笑って、
磁石を
敏ちゃんに
渡してくれました。
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