しろくまの子
小川未明
しろくまは、ほっきょくかいに のぞんだ アラスカ または シベリアに すんで います。しろくまは、水の 中へ はいって およぐ ことも できます。まっ白な けが ふさふさと して、かわいらしい 目を して いますが、それは たけしい けものです。
ある とき、しろくまの ははおやは 子どもたちを つれて、ひょうざんの 上で あそんで いました。
「おかあさんの そばを、はなれては いけません。」
と、いいきかせました。
けれど、一ぴきの いう ことを きかぬ 子ぐまは、かってに うみどりを おいかけて いました。この とき、パチンと 大きな 音が して、こおりの かたまりが 二つに われました。
子ぐまの のった こおりの かたまりは あちらへ ながれて いきました。オーロラの かがやく 空の 下を、ずんずん ながされて いきました。
「こまったなあ。」
と、子ぐまは おもいました。
きしに つくと、けがわを きた エスキモーの おじいさんが、しのびよって、ふいに あたまから、あみを かぶせました。子ぐまは いけどりに されたのです。そうして、おりに いれられて、とおい 町の どうぶつえんへ おくられました。
町の ぼっちゃんや じょうちゃんたちが 子ぐまを かわいがりました。おいしい パンや ビスケットを なげて くれました。子ぐまは ときどき おかあさんを おもいだして、
「ウオー。」
と、なきます。
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