高い木と子供の話(3)
日期:2022-11-18 23:59 点击:244
三
ある
日のこと、
友だちが、わいわいいいながら、あちらからやってきました。
「
善ちゃん、
君なら、とれるよ。
地主さんの
屋敷のすぎの
木に、からすが
巣を
造ったのだ。
下からも、よく
見える。いって
捕ろうや。」
「
高いかい。」と、
善吉は、
聞いた。
「それは、
高いさ。
善ちゃんでなければ、だれも、あんなところへ
登れないや。」
こうおだてられると、
善吉は、つい、みんなとそこへいってみる
気になりました。なるほど、すぎ
林の
中のいちばん
高い
木の
上の
方に、からすは、
巣をかけていた。
風が
吹くたびに、
木の
枝が
揺れて、
黒い
円い
塊が、よく
見えたり、また
見えなくなったりしました。
「あの
中に、からすの
子がいるよ。
善ちゃん、
登って
捕っておいでよ。」
「
垣根を
破って、はいったら、しかられるからいやだ。」と、
善吉は、
頭を
振りました。
「だいじょうぶだ。ここで、
番をしているから。」
「
善ちゃん、
君は、
木登りがうまいんじゃないか?」
「からすがくると、
頭をつつくだろう。」
「いま、
親がらすは、どこかへいっていないぜ。」
ちょうど、どこからか
親がらすが
帰ってきました。つづいて、また、一
羽帰ってきました。
母がらすと、
父がらすだったのでありましょう。
巣の
中の
子供は、
喜んで、カア、カア、
鳴いていました。
「いま、じきに
餌をさがしに、
親がらすがどこかへいくから、その
間に、
善ちゃん、
登って
捕っておいでよ。」と、
子供らは、すすめました。
はたして、しばらくすると、二
羽の
親がらすが、いなくなった。
善吉は、じっと
上を
仰いでいたが、
垣根のすき
間からくぐり
込んで、
地主の
屋敷にはいると、そのすぎの
木に
近寄って、するすると
登りはじめたのです。
「
善ちゃん、
落ちないように。」
「だいじょうぶ、
番をしているから。」
「やかましい。
黙っていれよ。」
子供たちは、
口々に、いっているうちに、
善吉の
姿は、いつしか、
木の
頂に
達して、しげった
枝の
中に
隠れると、
急に、カア、カアと、
子がらすのけたたましく
鳴く
声がきこえました。やがて、
善吉は、一
羽のまだ
飛べない
子がらすを
片手に
握って、すぎの
木から
降りてきました。
子供たちは、
善吉を
取り
巻いて、みんなで、あちらの
方へ
凱歌をあげてゆきました。あとで、
親がらすが
帰ってきたが、
留守の
間に、かわいい
子供を一
羽、さらわれたとわかると、
悲鳴をあげて
大騒ぎをしました。この
声を
聞きつけて、
何事によらず、
友情深い、おたがいに
助け
合うからすたちは、どこからともなく、たくさんこの
林の
中に
集まってきました。そして、
自分たちの
敵は、
何者だろう……。つれてゆかれた
子がらすは、どうなったろうと、あちらに
飛び、こちらに
飛び、わめきたてていました。
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