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高い木と子供の話(4)
日期:2022-11-18 23:59  点击:247


夕日ゆうひが、黄色きいろはやしあいだいろどってしずみかけたころから、はげしいかぜとなりました。ちょうど、このとき、地主じぬしのおじいさんは、かんかんにおこって、あちらからやってきました。
「だれだ! からすのったものは? おやがらすがきちがいになっていているので、うちにいられたものでない。」
善吉ぜんきちうちのそばで、子供こどもらは、からすのをおもちゃにしてあそんでいました。ちょうど、そこへおじいさんは、やってきたのです。近所きんじょひとたちは、何事なにごとこったのかとおもって、そとてみました。すると、ごろやかましい、がんこな、地主じぬしのおじいさんが、おこっているので、みんなちいさくなって、いきころして、ながめていました。善吉ぜんきち母親ははおやも、自分じぶん子供こどもが、いたずらをしたためしかられるのを、ひとかげになってていました。
「だれが、垣根かきねなどをやぶって、うちへはいったのだ。」と、おじいさんは、をみはりました。
「おらでない。」
ぜんちゃんだ。」
「だれが、などにのぼって、からすのったりしたのだ。」
「おらでないぞ。」
ぜんちゃん……。」
子供こどもたちは、口々くちぐちに、おれでないといいはりました。そして、善吉ぜんきちであることをぐちしたのです。善吉ぜんきちは、したいて、かおあかくしていたが、こころうちで、ともだちの卑怯ひきょうなのをにくんでいました。自分じぶんれといったのは、おまえたちではないか。そして、みんなで、あそんでいたのでないか。それを、しかられるときには、おれにだけつみをきせようとする、なんというたのみにならないやつだろう、とおもっていました。
「おまえか、からすのったのは?」
地主じぬしのおじいさんは、おそろしいかおをして、善吉ぜんきちをにらみました。
「はい。」と、善吉ぜんきちが、正直しょうじきにうなずいた。
「その子供こどもなかかえしてくるだ! あのとおり、おやがらすがいている。」と、おじいさんは、善吉ぜんきちめいじました。
はやしは、かぜのために波立なみだっていました。からすはぶように、そらくろく、きさわいでいました。そして、は、だんだんとれかかっていたのです。善吉ぜんきちは、からすのいて、地主じぬしあとについてゆきました。
ふいに、善吉ぜんきち母親ははおやが、した。
「だんなさん、からすの大事だいじか、人間にんげん大事だいじか。この大風おおかぜに、あなたはあのたかのぼらせなさるなのですか……。」
平常ふだんは、ものをいうのもはばかる地主じぬしかって、母親ははおやおおきなこえさけびました。近所きんじょ人々ひとびとはじめ、善吉ぜんきちまで、びっくりして、母親ははおやかおつめた。
のぼらせるもないものだ。おやのしつけがわるいから、こんないたずらをするのだ。」
「だんなさん、そこは、子供こどもです……。」
善吉ぜんきちは、もうだまっていられなかった。
「おっかあ、おれがわるかった。からすのにもどしてくる。なに、だいじょうぶだ。ちるもんか。」
こういうと、善吉ぜんきちは、しました。そして、するするとたかのぼって、なかへ、がらすをもとのとおりにいれてりました。
かれは、ほんとうのははであればこそ、この場合ばあい、だれでもおそろしがる、地主じぬしかって、自分じぶんのためにいいあらそってくれたのだ。それだのに、自分じぶんは、しかられるたびに、ははうたがい、またうらんだことをもったいなくおもいました。それからは、善吉ぜんきちは、学校がっこうからかえって、自分じぶんからすすんで、おとうとりし、またおや手助てだすけをしたのであります。
――一九二九・三――

石竹色せきちくいろ──石竹せきちくはないろ。うすい紅色べにいろ。ピンク。
 

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06/22 00:29