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玉虫のおばさん(1)
日期:2022-11-19 07:33  点击:224
 

玉虫のおばさん

小川未明


ある春子はるこさんが、久代ひさよさんのうちあそびにまいりますと、
「ねえ、春子はるこさん、きれいなものをせてあげましょうか。」と、いって、久代ひさよさんは、ひきだしのなかから、ちいさなきりのはこしました。
「このなかに、なにがはいっているか、あててごらんなさい。」と、わらいながら、いいました。
春子はるこさんは、なんだろうとおもいました。いくらあたまをかしげてもわかりません。
「わからないわ。」
「きれいなものよ。」と、久代ひさよさんは、にっこりしました。
指輪ゆびわでしょう。」と、春子はるこさんは、こたえました。
「いいえ、そんなものでないの。」
「じゃ、なんでしょう。宝石ほうせき?」
宝石ほうせきより、もっときれいなものよ。」
「もっときれいなもの……わからないからおしえてよ。」と、春子はるこさんは、まったく、見当けんとうがつきませんでした。
むしよ。」
「まあ、むし? ああ、わかったわ。ちょうでしょう。」
春子はるこさんは、宝石ほうせきよりうつくしいものは、ほかにはない。どうしても、ちょうであるとしかかんがえられませんでした。
「いいえ、ちがうのよ。」
「もう、わたし、わからないわ。はやせてよ。」と、春子はるこさんは、せがみました。
玉虫たまむしよ。ほらごらんなさい。」と、そのちいさなはこ久代ひさよさんは、春子はるこさんのわたしました。春子はるこさんが、ってみると、それは、うつくしい、べにざらをるように、むらさきのぴかぴかとしたはねった玉虫たまむし死骸しがいでありました。
「まあ、玉虫たまむしって、こんなにきれいなもの?」と、はじめて、玉虫たまむし春子はるこさんは、それにとれていました。
「ええ、そうよ。黄金虫こがねむしだから、たんすにれてしまっておくと、縁起えんぎがいいと、おかあさんがおっしゃってよ。」と、久代ひさよさんがいいました。
春子はるこさんは、そのときせてもらった、玉虫たまむしうつくしさをおうちかえっても、わすれることができませんでした。
まことさん、玉虫たまむしたことがあって?」と、春子はるこさんは、おとうとまことさんに、ききました。毎日まいにちちょうや、とんぼをりにあるいているので、むしのことなら、あるいは、っているかもしれないとおもわれたからです。
「ああってるよ。今度こんどつかまえたらねえさんにってきてあげようか。」と、まことさんはいいました。
「どこに、玉虫たまむしはいるの?」と、春子はるこさんは、ききました。
「それは、めったにいないけれどつけたら、ってきてあげようね。」と、まことさんは、こたえました。

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