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玉虫のおばさん(2)
日期:2022-11-19 07:33  点击:280
 
春子はるこさんは、どんなにそれがたのしみだったかしれません。そうしたら、久代ひさよさんに、自分じぶんのをせてあげようとおもいました。春子はるこさんは、やさしい性質たちでありました。まことさんがてたとんぼや、せみが、もちではねがきかなくなって、んでいけずににわ地面じめんちていると、春子はるこさんがつけて、すぐに、げたをはいてにわて、それをひろげました。
「まあ、かわいそうに、なんてまことさんは、乱暴らんぼうなことをするのでしょう。いまわたしがもちをってあげてよ。」と、いって、おくから揮発油きはつゆ綿わたにしませてきて、丁寧ていねいはねをふいてやりました。そして、それを夕空ゆうぞらはなしてやると、とんぼや、せみはさもうれしそうに、おれいをいって、んでいくようにえたのであります。
「ああ、いいことをした。」と、これをよろこぶ、やさしい春子はるこさんでありました。
おとうとまことさんは、あいかわらずもちざおをって、学校がっこうからかえるとちかくのまつのあるおかあそびにゆきました。はやくもあきがきて、そこには、いろいろのくさはなきました。そして、ひところのように、せみのこえはしなくなったけれど、やんまや、かぶとむしがいたからであります。
まつにまじってえている雑木ぞうきをたずねてあるいていると、一ぽんのかしわのがあって、そこにかぶとむしまっているくろ脊中せなかられました。
「あ、いる。」と、まことさんは、そのしたって見上みあげました。そこには、かぶとむしのほかに、さいかちがいたし、またおおきなありがうごいていたし、しかもすこしはなれたところに、ねえさんのしがっていた玉虫たまむしがとまっていて、それらを護衛ごえいするように、すずめばちが、おそろしいをして、あたりをきょろきょろながめていたのです。年老としとって、こしがったかしわのは、これらのむしたちにかわきずつけられて、あまえきわれているのを苦痛くつうかんずるのでありましょうが、どうすることもできずにいました。まことさんは、ぼうでかぶとむし玉虫たまむししたとすと、あわてて口笛くちぶえきながら、からだをすくめて、んできたはちの攻撃こうげきけようとしました。やがて、はちはまたへもどりました。そこで、まことさんは、二ひきむしひろうと大急おおいそぎでうちかえってきました。
ねえさん、玉虫たまむしつかまえてきたよ。ぼく揮発油きはつゆをつけて、ころしてやろうか?」と、まことさんは、いいました。これをきくと、春子はるこさんは、
っていらっしゃい。」と、いって、いそいで、てきました。
「きれいなむしなのね、久代ひさよさんところでたのより、よっぽどうつくしいわ。」
「それは、こっちがきているからだよ。」と、まことさんが、いいました。
「そうかしらん、ころすのはかわいそうね。」
ぼくころしてあげようか。」
かして、っておかない?」
「ああ、そうしようか。はちみつをやるといいのだよ。砂糖さとうでもいいかもしれない。」まことさんは、石鹸せっけんはいっていた、ボールばこあなけて、そのなかへかぶとむし玉虫たまむしれておきました。まことさんの留守るすに、春子はるこさんは、一人ひとりでかぶとむし玉虫たまむしとが、はこなかでもだえているのをながめていましたが、まことさんがかえると無理むりにすすめて、二ひきむしはらっぱへがしてやりました。
あるばんのことです。春子はるこさんは不思議ふしぎゆめました。なつからあきにかけて、はやしや、花園はなぞのにきてあそんでいたちょうや、はちや、や、とんぼや、せみが、だんだんさむくなるので、ふねってあたたかなみなみくに旅立たびたつのであります。そのなかにもいちばん目立めだってうつくしいのは玉虫たまむしのおばさんでありました。紫色むらさきいろ羽織はおりをきたおばさんは、ふねろうとして、
「また、来年らいねんまいります。」と、見送みおくりにいった春子はるこさんに、にこやかに、おわかれのあいさつをしていました。すると、いつか、もちをふいてがしてやった茶色ちゃいろのとんぼが、また玉虫たまむしのおばさんのかげから、ずかしそうにして春子はるこさんにあいさつをしていたのでありました。
 

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