二
いいお
天気で、
日曜日です。もう、
学校は二、三
日前から、はじまっていました。ご
用があっても、
二郎ちゃんは、
外へ
遊びに
出たぎり
帰ってきません。
新学年から、
勉強をするといいながら、しかたのない
子だとお
母さんは
探しに
外へ
出られました。
春風が
吹いて、たこのうなりがきこえています。お
母さんは、
「
二郎は、ここらにいませんか。」と、
遊んでいる
子供にお
聞きになりました。
「
二郎ちゃんは、さっき
勇ちゃんと
原っぱの
方へいったよ。」と、
子供は、
答えました。
どこかの
庭に
咲いている
花の
香が、
往来まで
流れてきます。
自転車は、
日の
光の
輪をかがやかして
走っていきました。
原っぱには、
子供がたくさん
遊んでいました。お
母さんは、どの
子供を
見ても、
自分の
子に
見えたのです。ズボンを
短くはいて、
足がすらりとして、
帽子を
横にかぶっている十
歳前後の
子供たちばかりであります。また、お
母さんは、
「
二郎はいませんか。」と、お
聞きになりました。
「いませんよ。
勇ちゃんのお
家へいったのでない。」と、
一人の
子供が、おしえてくれました。
「ありがとうよ。」
お
母さんは、
帰りかけながら、お
隣の
勇ちゃんの
家を
思い
出しました。いま
勇ちゃんのお
母さんは、お
産をして、まだ
床についていられました。
先日、おみまいにいくと、
勇ちゃんの
妹の、
小さなみい
子さんが、
「
二郎ちゃんのおばさん、ここ、ここ。」といって、
無理に
二郎ちゃんのお
母さんをたんすの
前へつれてきました。
「うん、うん。」と、ひきだしを
開けろというのであります。すると、
寝ている
勇ちゃんのお
母さんは、
「みい
子のお
好きな
赤いおべべが、はいっているというのですよ。」と、おっしゃいました。
「まあ、みい
子ちゃんの
赤いおべべが。」
「
赤ちゃんのおべべよりも、きれいだといっていただきたいのですよ。
奥さん、どうかあけて
見てやってください。」と、
勇ちゃんのお
母さんが、いわれました。
二郎ちゃんのお
母さんは、たんすを
開けて、みい
子ちゃんの、きれいなおべべをごらんになりました。
「きれいな、いいおべべですこと。」と、
二郎ちゃんのお
母さんが、おほめになりました。
「みい
子おべべ。」と、みい
子ちゃんは、しきりにいって、こんどは、これをきせてくれというのです。しかし、それは
単衣物でありました。
二郎ちゃんのお
母さんは、そのときの
無邪気なみい
子ちゃんのようすを
思い
出して、ひとりほほえみながら、
歩いていられました。
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