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つじうら売りのおばあさん(1)
日期:2022-11-26 23:56  点击:215

つじうら売りのおばあさん

小川未明


あるゆきのはれたばんがたでした。
「きょうは、義雄よしおさんのうちのカルタかいだ。」というので、みんなはよろこんでいました。
達夫たつおくんは、おとなりのかねさんをさそって、いくことになっていました。
が、あかくもをそめて西にしにしずみますと、ゆきのつもったやまのかげがまっくろになってえました。いよいよかける時分じぶんには、ゆきうえがこおって、あるくとさらさらとおとがしたのです。
「このあいだ、ぼくうちのカルタかいでおかおに、すみをぬられなかったのは、かねさん一人ひとりだけだろう。かねさんは、えらいなあ。」と、達夫たつおくんは今夜こんやまたけて、おしろいやすみをぬられるのかとおもうと、なんだか自分じぶんはいつもけて、はずかしいもちがしました。
達夫たつおさん、わたしみになりましょうね。わたしひとりでたくさんるからいいわ。あんたは自分じぶんまえだけよくていらっしゃいね。」と、かねさんはいいました。
しかし、達夫たつおくんはおんななんかからかばわれるのを、名誉めいよとはおもわなかったのです。
ぼく、カルタにはけるけど、すもうをればいちばんつよいんだがなあ。」と、あるきながら達夫たつおくんはりきみました。
そのばんのカルタかいは、なかなかにぎやかだったのです。カルタにつかれた時分じぶん、おすしや、あまざけや、みかんや、お菓子かしなどがました。それをべてからあとは、火鉢ひばちをかこんでおはなしはながさいたのでありました。
「つじうらりのおばあさんのかおひとがある?」と、だれやらがいうと、たちまちそのはなしでもちきりになりました。
このごろ、まちほうから毎晩まいばんゆきのふるときも、かぜのふくときも、かかさずにむらへはいってくるつじうらりがあります。そのこえいただけでは、おんならしいが、なかにはおとこだというものもあり、またおばあさんだというものもあれば、まだわかおんなだというものもあって、うわさがとりどりでありました。まれにつじうらをったものも、ちょうちんのでははっきりすがたさえわからないのに、あたまからきれをかぶってかおをかくしているというのでした。
「まだ、今夜こんやはやってこないね。」と、一人ひとりがいうと、
「どうして今夜こんやはこないのだろう?」
「いや、もうじきにくるだろう。」と、おばけかなんかのように、そのつじうらりの正体しょうたいがわからないので、気味きみわるがっていたのです。
「きたら、だれかわないかな。」と、義雄よしおくんがいいました。
「いちばんカルタにけたひとが、うことにしよう。」と、勇二ゆうじくんがいいました。
「だれだろう?」と、みんなはおたがいのかおまわしました。
そして、いちばん、すみやおしろいのおおくついているかおを、さがしそうとしました。
「ああ、達夫たつおさんだ。」と、おんな一人ひとりがさけぶと、
達夫たつおさんだ!」
達夫たつおくんだ!」と、口々くちぐちにいって、いちばんすみやおしろいのたくさんついているのは、達夫たつおくんにきまったのでした。
「ただ、つじうらをったばかりではおもしろくないから、おんなおとこかよくとどけることにしようじゃないか?」と、まただれかが難問なんもんしたのであります。
「さあ、たいへんだ。達夫たつおさん、できて?」と、義雄よしおくんのおねえさんがうつくしいかおわらいながらおっしゃいました。

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