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つじうら売りのおばあさん(2)
日期:2022-11-26 23:56  点击:215
 
そういわれたので、達夫たつおくんはかおあかくなりました。なぜなら、ごろから自分じぶんつよいのだと自信じしんしているだけに、いまさらはずかしくもできないなどと、弱音よわねをはきたくはなかったからでした。
達夫たつおさん一人ひとりでは、かわいそうだわ。」と、かねさんがいいました。
「じゃ、かねさんもいっしょにおいきよ。」と、だれかがからかいました。
わたし、こわいわ。」と、かねさんはぶるいしました。
ちょうど、このとき、かぜおとがして、そのあいまにとおくのほうで、「つじうら、つじうら。」というこえがしました。
「ほら、きた!」と、みんなはおそろしさ半分はんぶん、おもしろさ半分はんぶんに、おどりあがりました。
ぼく、いこうか?」と、達夫たつおくんはちいさいこえで、かねさんにいうと、
わたしもいっしょにいくわ。」と、かねさんは、ちいさいこえこたえました。
「いいよ、ぼくひとりで。」と、達夫たつおくんはつよくいいました。
「つじうら――つじうら。」
だんだんそのこえちかくなって、もうまもなく、このうちまえにきかかっていました。
ぼく、つじうらをってくる!」と、ふいに達夫たつおくんはちあがりました。
「えらいなあ!」と、なかにはびっくりして、こえをたてるものもあります。
達夫たつおくんは、さむいほしばれのしたそとて、戸口とぐちっていました。やがて、あわれなくろいかげがとぼとぼと雪道ゆきみちをちょうちんのでたどってくると、もうおそろしいなどということをわすれて、
「おじいさん、つじうら……。」といって、おあしをしました。
あわれなかげは、ちどまりました。くらいちょうちんのは、わずかに、しなびたをてらしだしました。
「おじいさんではありません、おばあさんですよ。ぼっちゃん、さむいからかぜをひかぬようになさい。」
そういって、そのあわれなかげは、またとぼとぼといってしまいました。
達夫たつおくんは、なかにあついなみだのわくのをおぼえました。そしてしばらくそのうしろすがたをおくっていると、
「つじうら――つじうら。」と、そのおばあさんのこえがたよりなくかぜえていきました。
このとき、にぎやかなうちなかから、
達夫たつおさん。」「達夫たつおさん。」と、みんなが自分じぶんをよんでいるのがきこえました。
 

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