いま、この教会 からもらったクレオンは、品質 が上等 とみえて、赤 の色 はまったく鮮紅 だったし、紫 の色 も、いつか友 だちの家 で見 た孔雀 の羽 のように光 っているし、そして青 い色 は、ステンド=グラスをとおして仰 ぐ、あの奥深 い大空 のようだったので、彼 の持 ってうまれた創造力 は、なにをかきあらわしていいか、頭 の中 で、出口 をしきりとさがしたのです。
彼 は、まず、まざまざと目 にのこっていた孔雀 をかきました。それとならべて、彼 には、お化 けと感 ずる、ひげのはえた丸 い顔 をかきました。しかしそれは、人間 の顔 でありません。目 から火 を吹 けば、口 からも、ちょろちょろと、へびのように、赤 い舌 を出 していて、頭 をかしげていました。
「だんだん、ほんとうの君 がでて、おもしろくなるね。」と、若 い先生 は、なにを画 から見取 ったものか、秀吉 を勇気 づけました。
このとき、とつぜん秀吉 は、
「先生 、神 さまは人間 をみんな平等 に愛 してくださるんですか。」といってききました。
「そうですとも。正直 なもの、また貧 しいものは、とりわけ深 く愛 してくださるのです。」と、先生 は、秀吉 を見 ながら答 えて、目 に涙 をうかべていました。
やがて、北国 の村 や、町 に、ちらちらと寒 い日 は、雪 が降 るようになりました。教会 では、そのころからストーブをたきはじめました。
ある日 、秀吉 のかいた自由画 は、これまでになかった特異 のものです。少年 らしい人間 が雪中 に埋 もれて倒 れていました。
そのそばには、いつものたこ入道 が、ひげのはえた口 を開 けて、さも勝 ちほこるように笑 いながら、赤 い舌 を出 している。また目 からも一筋 の糸 のように火 を吹 いて、少年 の死骸 を見下 ろしている。そして、この化 け物 には、幾本 も手 や足 があって、それがへびのように、電信柱 や街灯 の柱 に、まきついて、つめから血 がしたたっている。
すると、そのとき、頭 の上 を孔雀 のような美 しい羽 のある天女 が、ぐるぐると輪 をえがくごとく飛 び舞 っていました。あちらの空 は、真 っ青 で海 の色 をし、また片方 の空 は真 っ赤 で、日 が沈 みかけていました。
若 い先生 は、この画 にひどく感動 したようすでした。
「なんという題 をつけたらいいかね。」と、先生 は、秀吉 にいいました。
「天女 とお化 けです。」と、秀吉 は答 えたのです。
「ああ、それがいい。この画 の意味 は、どうやらわかるようだ。」と、先生 は、いつまでも画 に見入 っていました。
教会 へあつまる子供 らの画 には、それぞれ特色 があり、個性 があらわれていたので、教会 では、それらの作品 をあつめて、一般 にしめす展覧会 を催 すことになりました。
当日 は、学校 の教師 や、また家庭 の父兄 たちが、参観 にやってきました。ちょうど昼 ごろのことです。参観者 の一人 が急 に卒倒 して、大 さわぎとなりました。さっそく医者 をよんで、関係者 たちは介抱 しましたが、診断 の結果 は、急性脳溢血 ということがわかって、もはや手 の下 しようがなかったのです。
このとき、場内係 の、自由画 を受 け持 つ若 い先生 もやってきて、先生 は二度 びっくりしました。死人 の頭 がはげて、ひげのある丸 い顔 は、秀吉 のいつもかく、お化 けの顔 そっくりだったからでした。
「だんだん、ほんとうの
このとき、とつぜん
「
「そうですとも。
やがて、
ある
そのそばには、いつものたこ
すると、そのとき、
「なんという
「
「ああ、それがいい。この
このとき、