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天女とお化け(3)
日期:2022-11-26 23:56  点击:216
 
 いま、この教会きょうかいからもらったクレオンは、品質ひんしつ上等じょうとうとみえて、あかいろはまったく鮮紅せんこうだったし、むらさきいろも、いつかともだちのいえ孔雀くじゃくはねのようにひかっているし、そしてあおいろは、ステンド=グラスをとおしてあおぐ、あの奥深おくぶか大空おおぞらのようだったので、かれってうまれた創造力そうぞうりょくは、なにをかきあらわしていいか、あたまなかで、出口でぐちをしきりとさがしたのです。
かれは、まず、まざまざとにのこっていた孔雀くじゃくをかきました。それとならべて、かれには、おけとかんずる、ひげのはえたまるかおをかきました。しかしそれは、人間にんげんかおでありません。からけば、くちからも、ちょろちょろと、へびのように、あかしたしていて、あたまをかしげていました。
「だんだん、ほんとうのきみがでて、おもしろくなるね。」と、わか先生せんせいは、なにをから見取みとったものか、秀吉ひできち勇気ゆうきづけました。
このとき、とつぜん秀吉ひできちは、
先生せんせいかみさまは人間にんげんをみんな平等びょうどうあいしてくださるんですか。」といってききました。
「そうですとも。正直しょうじきなもの、またまずしいものは、とりわけふかあいしてくださるのです。」と、先生せんせいは、秀吉ひできちながらこたえて、なみだをうかべていました。
やがて、北国ほっこくむらや、まちに、ちらちらとさむは、ゆきるようになりました。教会きょうかいでは、そのころからストーブをたきはじめました。
ある秀吉ひできちのかいた自由画じゆうがは、これまでになかった特異とくいのものです。少年しょうねんらしい人間にんげん雪中せっちゅうもれてたおれていました。
そのそばには、いつものたこ入道にゅうどうが、ひげのはえたくちけて、さもちほこるようにわらいながら、あかしたしている。またからも一筋ひとすじいとのようにいて、少年しょうねん死骸しがい見下みおろしている。そして、このものには、幾本いくほんあしがあって、それがへびのように、電信柱でんしんばしら街灯がいとうはしらに、まきついて、つめからがしたたっている。
すると、そのとき、あたまうえ孔雀くじゃくのようなうつくしいはねのある天女てんにょが、ぐるぐるとをえがくごとくっていました。あちらのそらは、さおうみいろをし、また片方かたほうそらで、しずみかけていました。
わか先生せんせいは、このにひどく感動かんどうしたようすでした。
「なんというだいをつけたらいいかね。」と、先生せんせいは、秀吉ひできちにいいました。
天女てんにょとおけです。」と、秀吉ひできちこたえたのです。
「ああ、それがいい。この意味いみは、どうやらわかるようだ。」と、先生せんせいは、いつまでも見入みいっていました。
教会きょうかいへあつまる子供こどもらのには、それぞれ特色とくしょくがあり、個性こせいがあらわれていたので、教会きょうかいでは、それらの作品さくひんをあつめて、一ぱんにしめす展覧会てんらんかいもよおすことになりました。
当日とうじつは、学校がっこう教師きょうしや、また家庭かてい父兄ふけいたちが、参観さんかんにやってきました。ちょうどひるごろのことです。参観者さんかんしゃ一人ひとりきゅう卒倒そっとうして、おおさわぎとなりました。さっそく医者いしゃをよんで、関係者かんけいしゃたちは介抱かいほうしましたが、診断しんだん結果けっかは、急性脳溢血きゅうせいのういっけつということがわかって、もはやくだしようがなかったのです。
このとき、場内係じょうないがかりの、自由画じゆうがわか先生せんせいもやってきて、先生せんせいは二びっくりしました。死人しにんあたまがはげて、ひげのあるまるかおは、秀吉ひできちのいつもかく、おけのかおそっくりだったからでした。
 

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