三
「こんなところへきては、
後ろへもどるようなものだ。あのおばあさんは、うそをいったな。」と、
大将は
怒られました。その
夜は
野宿をして、
翌日、またその
道を
引き
返したのです。
今度は、あちらから、
白い
着物をきて、
髪を
乱したはだしの
娘がきました。
大将は、その
娘を
呼び
止められました。
「
俺は、
大将だが、
都の
方へゆく
路は、どういったがいいか。」と、おたずねになりました。
娘は、
悲しそうな
顔つきをして、
大将の
顔をながめていましたが、
「この
路をまっすぐにゆきなされば、あなたの
思し
召しなさるところへ
出られます。」と
申しあげました。
大将は、うなずかれて、この
娘は
正直者らしいから、けっしてうそはいうまいと
思われて、
娘の
指さした
路を
急いでゆかれました。
やはり、どこまでゆきましても、
人家らしいものは
見あたりませんでした。やっと、たどり
着くと、そこはまだ
新しい
墓場で、
今度の
戦争に
死んだ
人のしかばねがうずまっていて、
土の
色も
湿っていたのでありました。
「
俺は、こんなところへきたいと
思ったのでない。じつに
不埒なやつらだ。なんでこの
名誉ある
俺を、みんなが
欺くのだ。」と、さすがの
大将も、ひどくお
怒りになりました。
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