四
また、すごすごと、
大将はきた
路をもどらなければなりませんでした。
そのうちに、いつしか、その
日も
暮れかかったのであります。すると、あちらから、おじいさんが、つえをついてきました。
大将はそのおじいさんを
呼び
止めて、
自分は
大将であるが、
都へ
帰ろうと
思って
道に
迷って、
二人の
女たちに
路をきいたら、みんなうそをいったが、それはどういうものだろうと
問われたのであります。
おじいさんは、つえにすがって、
背を
伸ばしながら
答えました。
「
年老った
女は、
母親であって、その
子供が
戦争にいって、
死んだのを
深く
悲しんでいるからでありましょう。」と
答えました。
「そんなら、
娘は……。」と、
大将は
問われました。
おじいさんは、
「その
娘は、
結婚して、まだ
間もないのであります。それを
夫が
戦争にいって、
死んだのを
深く
悲しんでいるからでありましょう。」と
答えました。
おじいさんは、
大将に、
都にゆく
路をていねいに
教えました。
大将は、
今度は、まちがいなく
都に
帰られました。そして、
高い
位に
上りましたが、
大将は、また一
面において
人情にも
深かった
人で、
死んだ
人々に
同情を
寄せられて、ついに
大将の
職を
辞して、
隠居されたということであります。
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