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都会はぜいたくだ(2)
日期:2022-11-27 08:38  点击:288
 
かねがいくらたかくても、うまいものをひとのたくさんいる東京とうきょうへ、あのおじいさんのとったなまずや、かんぶなは、このとおきたの八郎潟ろうがたからおくられてきたふなのように、おくられたのではないだろうかと、おかねはかんがえました。
おくさま、どうして、東京とうきょうひとは、たかいおかねして、めずらしい、うまいものをべるんでしょうか。」と、おかねは、ききました。
「おまえ、それは、みやこ田舎いなかとは、いっしょにならないよ。東京とうきょうひとは、くちがおごっているから。しかし、このごろは、田舎いなかも、だんだん東京とうきょうおなじになってきたというはなしだよ。」と、おくさまは、おっしゃいました。
しかし、おかねは、自分じぶんまれたむらは、むかしとかわらないとおもっていました。
おくさま、そんなことをすると、わたしどもには、ばちがあたります。」とこたえた。
「ほほほ。」と、おくさまは、わらわれました。
いろいろ外国がいこくからきた、びんにはいったよいさけのならべてあるところへきて、おくさまは、あおいろさけをおいになりました。
おくさま、おさけをめしあがるのでございますか?」と、おかねは、ききました。
「これは、あまいおさけなのよ。」
ほんとうに、いえかえると、かわいらしいグラスのコップについで、おくさまは、あおいおさけをめしあがりました。
「おかね、おまえも一ぱいんでごらん。」といわれたので、おかねは、びっくりして、
わたしは、まだ、おさけくちにいれたことがありません。」と、辞退じたいしました。
「いいえ、このおさけは、けっして、どくにはならないの。そして、それをむと、なにかしらん、むかしのことをおもすから……。」と、おくさまは、おっしゃいました。
おくさま、むかしのことといいますと……。」と、おかねは、なんとなく、なつかしいような不思議ふしぎがしたのです。
「そうなの、わすれてしまったことをおもすのだよ。」
おかねは、そういわれると、んでみたくなりました。
「すこしばかり、いただきます。」といいました。
あお夕空ゆうぞらのように、あわいかなしみをたたえたおさけが、ちいさなコップにつがれました。おかねは、それに、くちびるをつけると、あまくてさけというかんじはしませんでした。これなら、もっとめるようにおもいましたが、やはりそれは、さけでありました。いつしか、いい心地ここちとなったのであります。
しばらくすると、むねなかあつくなりました。そして、おかねは、むのでなかったとおもいました。
わすれてしまった、むかしのことって、いつ、おもすのだろう? おくさまは、わたしをおだましになったのかもしれない。」とおもって、とこにつきました。
*   *   *   *   *
弥吉やきちじいさんのまごに、新吉しんきちという少年しょうねんがありました。おかねとはなかよしでありました。新吉しんきちには両親りょうしんがなく、おじいさんにそだてられたのであります。
ある二人ふたりは、草原くさはらうえあそんでいました。すると、新吉しんきちは、ぼんやりとって、あちらのたかやまほうていましたが、きゅうに、しくしくとしました。おかねは、おどろいて、
「どうしたの? しんちゃん。なぜ、くの……。」と、たずねました。
新吉しんきちは、だまって、両手りょうて自分じぶんをこすって、なみだをふきました。
「どうしたの? しんちゃん。」と、おかねは、かさねて、たずねました。けれど、新吉しんきちは、さびしそうなかおつきをして、だまっていました。そして、いまのことは、すぐにわすれてしまって、二人ふたりはそれから、おもしろそうにあそんだのであります。
新吉しんきちは、九つのとき、ほんの一病気びょうきになってたばかりでんでしまいました。弥吉やきちじいさんの、なげきは一通ひととおりでありません。その、おじいさんは、さびしい、たよりない生活せいかつおくらなければなりませんでした。おじいさんは、まご新吉しんきちなかよしであった、おかねをいつまでもかわいがってくれました。
いつのまにか、おかねは、とこなかで、わすれていたむかしのことをおもしていました。すると、きゅうに、むかしがなつかしく、ふるさとがこいしくなって、とこなかですすりきをしました。そのうちに、眠入ねいってしまったのです。
ねむりがさめると、いいお天気てんきでありました。おかねは、もう昨日きのうのことはわすれて、せっせとはたらきました。なつは、はやくからにわさきにたって、まつばぼたんのはなが、あかしろ、いろいろにうつくしくえるようにいていました。
「まあ、きれいだこと。」と、とれていると、ばちが、はねらして、はなうえんでいます。そこへ、おくさまは、おえになって、わらいながら、
「おかねは、昨夜ゆうべ、なにか、ゆめたね?」と、おっしゃいました。
おかねは、あたまをかしげましたが、おもすことができません。しかたなく、したいてわらっていました。
おそろしいゆめでもたのか、おおきなこえしてよ。」と、おくさまはいわれました。
おかねは、ひさしぶりに、子供こども時分じぶんのことをとこにはいってからおもしたことだけはわかりました。けれど、そのほかのことは、わかりませんでした。彼女かのじょは、また、はればれとしたかおをして、おもしろそうに、仕事しごとをつづけました。
 

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