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時計とよっちゃん(3)
日期:2022-11-27 08:39  点击:301
 


よっちゃんは、また、お菓子かしをおかあさんにねだりました。「ええ、あげますよ。いまたべたばかりだから、あの時計とけいながはりが、ぐるりとまわって、まっすぐになったらあげますよ。」と、おかあさんはいわれました。おかあさんは、あっちにいって、ちゃわんをあらったり、おもてをいたりしていられました。よっちゃんは、ちゃだんすのまえって、時計とけい見上みあげていましたが、そのうちに、おかあさんの針箱はりばこをひきずってまいりました。そしてそのうえって、かわいらしいゆび時計とけいながはりうごかしたのでした。「チョット、チョット。」と、時計とけいはいつもおなじことをいっていましたが、よっちゃんが、なにをしてもおこりはいたしませんでした。よっちゃんは、ゆびちからをいれて、うなりながら、ながはりをぐるりとまわして、そして、まっすぐにいたしました。よっちゃんは、針箱はりばこからおりると、いそいでおかあさんのいなさるところへはしってきました。「お菓子かし……ねえ、おかあちゃん、お菓子かしくれない。」といいました。「まだ、ながはりは、まわりませんよ。」と、おかあさんはいわれました。「まわった、おかあちゃん、はりはまわったよ。」と、よっちゃんは、しきりにいいました。


「どれ、どこまで、ながはりがいったか、ましょうね。」と、おかあさんは、よっちゃんが、しきりにいうので、うちがって、ちゃだんすのところへやってきました。そして、時計とけいてびっくりしました。
「まあ、おまえは、もうはや、こんなわるい、いたずらをするの?」と、おかあさんはいって、よっちゃんを、げてしかりながらほおずりをしました。「もう何時なんじだか、時間じかんがわからなくなって、こまるじゃないの。」と、おかあさんはいって、そとて、近所きんじょいえで、時間じかんいてきました。そして、時計とけいはりなおしました。「ねえ、おかあちゃん、お菓子かしくれないの。」と、よっちゃんはねだりました。「こんな、わるいいたずらをするは、おかあちゃんは、いや。」と、おかあさんはいわれました。すると、よっちゃんは、かなしくなって、しました。「もう、これから、こんな、おいたをしなければあげますが、もうしない?」と、おかあさんはきますと、よっちゃんは、かわいらしいで、のあたりをこすりながら、うなずきました。よっちゃんは、お菓子かしをもらって、そとちいさなげたをはいて、あそびにました。そして、いま、おかあさんにしかられたことを、もうわすれていました。


晩方ばんがた、おとうさんが、役所やくしょからかえってこられると、おかあさんは、よっちゃんが、針箱はりばこをふみだいにして、時計とけいながはりをまわしたはなしをいたしました。おとうさんは、よっちゃんが、りこうだといって、わらわれました。そして、あの時計とけいも、はやくガラスをはめなければならんと、いわれました。しかし、時計屋とけいやなおしにやると、あとでほかに時計とけいがないので不自由ふじゆうなものですから、一にち、一にちびてしまうのでありました。おかあさんは、どこか、もっとたかいところへ時計とけいいたら、よっちゃんが、いたずらをしないとおもいましたから、翌日よくじつは、たんすのうえきました。
もう、よっちゃんは、針箱はりばこをふみだいにしてもがとどきませんでした。また、着物きものをいれるたんすは、たかいから、そのまえってもよっちゃんは、まるしろ時計とけいかおることさえできませんでした。よっちゃんは、どんなにさびしくおもったでありましょう。けれど、時計とけいをそんな、たかいところにせておくのは、おかあさんにも、不便ふべんでありました。なぜならおかあさんは、すわっていて、時間じかんることができなかったからであります。いつのまにか、おかあさんは、また、時計とけいちゃだんすのうえってきました。よっちゃんは、また、まるしろかおをいままでのようにることができるようになりました。
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