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どこで笛吹く(2)
日期:2022-11-28 23:41  点击:241
 


その光治こうじ学校がっこうかえりに、しくしくといて、ほうをさしてみちあるいてきました。それは三にんにいじめられたばかりでなく、みんなからのけものになったというさびしさのためでありました。真夏まなつ午後ごごひかり田舎道いなかみちうえあつらしていました。あまりとおっている人影ひとかげえなかったのであります。このときあちらから、はこ背中せなかにしょって、つえをついた一人ひとりのじいさんがあるいてきました。光治こうじは、このおじいさんをきはらしたて、たびからたびへとこうしてあるひとのようにおもったのでありました。じいさんも、また光治こうじかおをじっとましたが、みちうえまって、
ぼうはなんでいているのだ。」
と、やさしくじいさんはうたのであります。
光治こうじははじめのうちはだまっていましたが、そのおじいさんは、なんとなく普通ふつうのあめりじいさんやなんかのようにおもわれず、どこかになつかしみをおぼえましたから、かれはついに、その学校がっこうでみんなからのけものになったことや、三にんからいじめられたことなどをはなしまして、またきゅうかなしくなってはなしをしながらきだしたのでありました。
「ああ、わかった、わかった、ぼうはいいだ。もうくでない、その三にんわるやつじゃ。そして、みんなはいくじなしだ。そんなものにかまわんでおくだ。また、いいともだちができる、きっとできる。おまえにふえをやる、このふえいて、一人ひとりあそんでいると、すこしもさびしいことはない。さあ、このふえをやるから、一人ひとりでおとなしくあそんで、勉強べんきょうをしておおきくなるんだ。」
といって、じいさんはこしげていた、ちいさなふえ光治こうじにあたえたのであります。
光治こうじは、そのふえをもらってってみますと、たけ真鍮しんちゅうがはまっている粗末そまつふえおもわれました。けれど、それをいただいて、なおもこの不思議ふしぎなじいさんを見上みあげていますと、
「さあ、わたしはゆく……またいつか、おまえにあうことがあるだろう。」
といって、光治こうじあたまをじいさんはなでて、やがてそのみちあるいていってしまいました。光治こうじは、しばらくそこにって、じいさんを見送みおくっていますと、その姿すがた日影ひかげいろどるあちらのもりほうえてしまったのでありました。
そのから光治こうじて、一人ひとりでそのふえくことをけいこしたのであります。そのふえはじつに不思議ふしぎふえで、いろいろないい音色ねいろました。かれはじきにそのふえ上手じょうずに、また自由じゆうるようになりました。かれかぜおとそうとおもえば、そのふえは、さながらかぜ木々きぎうえわたるときのさわやかなすずしげな、ずれのおとこえるようにわたりました。またあめおとそうとおもえば、ちょうどあめりだしてきて軒端のきばつようなおとらしました。また小鳥ことりのなくをたてようとおもえば、こずえにきてふしおもしろそうに小鳥ことりすことができたのであります。
光治こうじ学校がっこうからうちかえると、じいさんからもらったふえって野原のはらたり、またふもともりはいって、あるいはくさうえこしろしたり、あるいはこしをかけたりし、そのふえくのをなによりのたのしみとしたのでありました。かれはこうしてふえいていますと、あるときは、くびのまわりのあかい、はねいろうつくしい小鳥ことりがどこからかんできて、すぐ光治こうじふえいているあたまうええだまって、はじめのうちは、こくびをかしげて熱心ねっしんしたほういて、ふえきとれていましたが、しまいには小鳥ことりも、そのふえにつられてさえずりはじめたのでありました。こんなふうに光治こうじは、小鳥ことりまで自分じぶんともだちとすることができたので、もはや一人ひとりあそぶことをすこしもさびしくはおもわなかったのであります。
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