四
広い食堂兼控所に十六人のものが集ってKを囲んだ。
Kの顔色は青白く、頭髪は乱れていた。各自は手を組んで、じっとKの顔を見詰めていた。
「犠牲になったのは誰だ?」
「B――だ。」
また、四辺はしんとして静まり返った。
「塾長、早く言えばいいに……。」と一人がいう。
「もう暗くなるんだ。」
「何を考えているんだい。」
「…………。」
Kは、沈痛な言葉でいった。
「私は、幾日か夜も眠らず、食を廃して研究して見ました。」
「世の中に不思議な事実はない。今まで私が不思議と思っていたことは潜在意識に他ならなかったのです……。」
「この分で研究が進んで行ったなら、
Kは、更に沈痛な顔色に
「B君は犠牲になりました。みずから進んで被験者となってくれました。潜在意識の研究はもとより、今度の実験で人間というものが日頃のひととなりに反し――全く矛盾している――秘密を持っていることが分ったのです。」
「Bに、どんな秘密があったろう……。」
「明日その研究の結果を報告いたします。」
「もう暗くなった。」
「Bは、死んだのかい。」と誰やらがいった。