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二百十日(1)
日期:2022-12-03 23:59  点击:272
 

二百十日

小川未明


そらたか羽虫はむしいかけていたやんまが、すういとりたとたんに、おおきなくものにかかってしまいました。しまったといわぬばかりに、はねをばたばたしてげようとしたけれど、どうすることもできませんでした。
縁先えんさきで、新聞しんぶんんでいたおじいさんは、ふとかおげた拍子ひょうしに、これがはいってじっと眼鏡めがねそこから、とんぼのくるしがるのをたのであります。
かわいそうにと、おじいさんは、おもいました。としをとると、すべてのことにたいして、あわれみぶかくなるものです。そして、いまにもくもがてきて、まえで、とんぼのころされるのをるにしのびませんでした。
正二しょうじや。」と、おじいさんは、まごびました。自分じぶんにはどうにもならなかったからです。
あちらのへやで、明日あした宿題しゅくだいをしていた正二しょうじは、何事なにごとかとおもって、すぐに祖父そふのところへやってきました。
「なんですか、おじいさん。」
「あれな、いまやんまがんできて、くものにかかったんだ。かわいそうだからたすけてやんなさい。」
正二しょうじは、いつも、こんなようなことにあったときは、ひとにいわれなくとも、自分じぶんからすすんでたすけてやる性質せいしつでありました。
「くもは、どうしたのか、てきませんね。」と、正二しょうじは、不思議ふしぎそうに、見上みあげていました。
「いや、どこかにかくれていて、やんまのよわるのをっているのだ。なかなかずるいやつだからな。はやくたすけてやんなさい。」
おじいさんは、まごまごしていると、やんまが、つかれてんでしまうとおもったのでした。
正二しょうじは、勝手かってもとへいって、なが物干ものほしざおをって、うらほうへまわりました。にわにはごろから、おじいさんの大事だいじにしている植木鉢うえきばちが、たなのうえならべてありました。かれは、それをとさないように、自分じぶんちからにあまるながいさおをげて、垣根かきねきわまでいきましたけれど、まだそのさおのながさでは、くものまでとどきませんでした。
「おじいさん、だめですよ。」
やんまは、まだきていて、ときどきおもしたように、ばたきをしました。けれど、どうしたのか、くもはまだ姿すがたせませんでした。
「さおがみじかいか、よわったのう。」と、おじいさんは、眼鏡めがねなかから、ちいさなひかで、やんまをつめていられました。
「ああ、おもい。」
正二しょうじ、さおをドシンと垣根かきねうえたおしました。そのくものは、たか木立こだちえだから、隣家りんかの二かいのひさしへかけているので、となり屋根やねがるか、それともとなりへいうえのぼらなければ、さおがとどかなかったのでした。
「かまわずにおきましょうか。」
しかし、おじいさんには、らぬかおをしていることができませんでした。
「あちらのへいがれば、とどくだろう。」
ぼく、やだなあ。」
「いいだから、たすけておやり。なんでもおまえのほしいものをってやるから。」と、おじいさんは、いいました。
「ほんとう? おじいさん、ぼくにハーモニカってくれる。」と、正二しょうじは、きました。このあいだから、おじいさんに、ねだっているしなです。
ってやるから、たすけておやり。」と、おじいさんは、いいました。
これをくと、正二しょうじは、一は、うれしそうなかおつきをしましたが、きゅうになんとおもったか、
「いいよ、おじいさん、ぼくってくれなくてもいいの。」といいながら、さおをかついで、となりいえもんけてはいっていきました。
ちょうどそのとき、そろそろといとつたって、おおきなくろいくもが、やんまにせまっていました。

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