二百十日(2)
日期:2022-12-03 23:59 点击:269
これを
見た
正二は、
急いで、
塀へ
上がると、
「こいつめ。」といいながら、さおでまずやんまを
払い、つぎにくもを
落としました。
巣がずたずたに
切れて、やんまは、やっと
飛んでいくことができたし、くもはちぢこまって
下へ
落ちました。
「おお、ようした。ようした。ハーモニカを
買ってやるぞ。」
正二が、
庭へもどってくると、おじいさんは、
生き
物の
命を
助けた
喜びに、
顔をかがやかしていいました。
「おじいさん、こんど
僕、いいお
点をもらってきたときでいいよ。」
「どうしてか、なぜ
今日ではいらないのだ。」
おじいさんは、
不思議に
思いました。
「どうしても。だって、やんまを
助けてやるのは、あたりまえだろう。」
正二、こんなことで、
日ごろの
言い
分を
通すのは、あまりうれしくなかったからでした。
「そうか、それは、
感心だ。ごほうびをもらわなくても、
正しいことは
進んでやるのが
善い
子供なのだ。」
おじいさんは、
上機嫌でありました。
正二も、おじいさんにそういわれると、ハーモニカを
買ってもらったよりもうれしかったのでした。
晩方のことです。
正二が、
外へ
出ると
徳ちゃんが、
飛んできました。
「
正ちゃん、おもしろいことをしない。」といいました。
「おもしろいことって、どんなことだい。」
「お
化けごっこだよ。」
「お
化けごっこって、どうするの。」
徳ちゃんは、
正二に、いろいろ
知恵を
与えたのです。
「すてきだね、
待っておいで。
僕、
家へいって
絵を
描いてくるから。」と、
正二は、
走り
出そうとすると、
「
僕、お
母さんのエプロンを
持ってくるからね。」
徳ちゃんも、
家へ
向かって
駆けていきました。
二人は、
他の
子供らに、
知られぬように、とうもろこしの
畑であうことにしました。
脊高く
茂ったとうもろこしの
畑には、うまおいが、
鳴いています。
星晴れのした、
青い
夜の
空を
白い
雲が
走っていました。もうどことなくゆく
夏の
姿が
感じられたのです。
徳ちゃんは、お
母さんのエプロンを
持って
先にいって
待っていると、
正二は、
自分で
急ごしらえの
般若面を
持ってやってきました。
「ああ、ろうそくがなくては、いけないね。」
「そうだ、うりで
行燈を
造ろうよ。
僕、
小さいろうそくを
持ってくるから。」
正二は、
家へ
仏壇へ
上げるろうそくとマッチを
取りにいくと、
徳ちゃんは、その
間に
大きなうりをさがしてきて、
中の
種子を
出して、
燈火のつくような
穴を
明けていました。そこへ
正二がもどってまいりました。これで、すっかり
用意ができてしまいました。
「だれが、お
化けになるの。」
「じゃんけんして、
負けたものにしようや。」
二人は、じゃんけんをしました。
正二が、
負けました。
「
正ちゃんが、お
化けだよ。」
「おもしろいな。」と、
正二は、
白いエプロンを
着て、
自分の
造った
般若面を
被りました。
「どんなだい?
徳ちゃん。」
「おう、すごいよ。ほんとうのお
化けみたいだ。」
「ほんとう。」
「
頭へ、とうもろこしの
毛をつけるといいよ。」
徳ちゃんは、
枯れた
毛を
取ってきて、
正二の
頭へのせました。それから、うりのちょうちんに、
火をつけて、ぶらさげました。
濃い
緑色の
火が、あたりを
暗く
照らして、
正二の
白い
姿を
気味悪く
見せました。
「やあ、おっかないな。」
徳ちゃんは、これを
見て
逃げ
出そうとしました。
「
徳ちゃん、そんなにおっかない。」
「ぞっとするよ。」
「おもしろいな。だれか
呼んでおいでよ。」と、
正二は、とうもろこしの
葉蔭に
隠れました。
往来で、
二人の
小さな
子供が、もう
暗くなったのに、まだ
遊んでいました。
勇ちゃんと
光ちゃんです。
「
明日は、二百
十日だよ。
川の
堰をはらって、
魚を
捕るのだね。」
「
勇ちゃんも
川へ
入る?」
「
入るさ。」
「
僕、
兄さんが
魚を
捕って
投るのを、
岸にいて、バケツへ
入れるのだ。」
「
光ちゃんも
川へお
入りよ。」
「なまずがとれるといいな。こいもいいな。」
「かにがいいよ。」
「かめの
子が、いいよ。」
そこへ、
徳ちゃんが、やってきました。
「
勇ちゃん、
畑にお
化けが
出るよ。」
「お
化け? うそだい。」
「うそなもんか、いってごらんよ。」
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