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ねずみとバケツの話(2)
日期:2022-12-03 23:59  点击:269
 
ねずみは、すぐにがりました。そして、バケツのなかみました。いまは、おおきくつよくなって、そんなことをするのは、ねずみにとってなんでもなかったのであります。かれは、そこにあった、うまそうなものからべました。そして、もっと、なにかしたほうにはいっていないかとおもったので、ガタ、ガタと、バケツをらしながら、べるものをさがしました。
いたい、いたい、ねずみさん。どうかしずかにしてください。わたしは、からだうごかすたびに、いたんでたまらないのですから。」と、バケツは、かなしそうなこえしてうったえました。
ねずみは、その言葉ことばをきくと、あわれになりました。
「どうしたのですか? こればかしうごいて、そんなにいたいというのは……。」と、ねずみはたずねました。
「ねずみさん、わたしは、このながしにながあいだやくをつとめていました。そのうちにからだのところどころがさびて、きずがついて、もうみずをいれるちからがなくなりかけた時分じぶんに、セメンでその傷口きずぐちをうずめられました。そののちも、かなりしばらくのあいだは、わたしは、やくをつとめたのであります。いよいよだめになると、こんどは、ここにされてごみのいれものとなりましたが、もうからだじゅうがいたんでしまい、すこしうごくと、セメンをめたところがけて、いたんでいたんでたまらないのでございます。」と、バケツはこたえました。
ねずみはそのはなしをきいて、このバケツは、自分じぶん子供こども時分じぶんに、みずもうとしてちたときに、まだぴかぴかひかっていばっていて、無情むじょうであったのだということをおもしました。しかし、このねずみはりこうなねずみでありましたから、いま、こんなふうになってしまったバケツにたいして、なにもいいませんでした。ただこころなかで、その末路まつろあわれんでいたのであります。
「それはおどくのことです。わたしは、すぐにここからますから。」といって、ねずみはバケツのそとして、
「ときにバケツさん、むかし、あなたといっしょであった柄杓ひしゃくさんは、どうしましたか。」とききました。
「あの柄杓ひしゃくですか。あれは、わたしよりも、もっとはやく、あまりからだ使つかいすぎたために、あたまがとれてやくにたたなくなってしまいました。人間にんげんは、そうなると、まことに冷酷れいこくなものです。そのあさ柄杓ひしゃくをどこかへててしまいました。しかし、ひとごとでありません。わたしがそうなるのもちかいうちです。」と、バケツは、まったくまえ元気げんきはなく、かなしそうにいいました。
ねずみは、自分じぶんにしんせつであった柄杓ひしゃく最後さいごをきいて、むねがいっぱいになって、ものをいうことすらできませんでした。
そのとき、なんともいえぬうまそうなにおいが、どこからかしてきました。ねずみはきゅうはなをひくひくさせました。
「あのうまそうなにおいは、どこからするのだろう。」と、あちこちまわしはじめたのです。
「ねずみさん、油断ゆだんをしてはいけません。昨日きのう昼間ひるま人間にんげんがねずみとりぐすりものなかへいれて、そのへんにまいたようですから……。」と、バケツはいいました。
「ありがとう……。そんなこととはらないものですから、べたらたいへんでした。」と、ねずみはいって、おれいもうしました。たとえ、りこうなねずみにせよ、それをさとるはずがないからでした。
「ねずみさん、そればかりではありません。毎夜まいよ、いま時分じぶん……ねこがやってきますからをおつけなさい。」と、バケツはおしえてくれました。ねずみは、このうち付近ふきんにすむことの危険きけんをつくづくとかんじました。そして、やはり、自分じぶんは、あのみぞふちかえるほうがいいとおもいました。ちょうど、あめれて、そらには、つきていました。
「バケツさん、どうぞご機嫌きげんようおらしなさい。」と、ねずみはわかれをげて、ふたたびさびしい町裏まちうらほうしてかけました。かれは、みちすがら、むかしてきであったバケツが、いまとしをとってやさしくなったのをさびしくかんじました。
 

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