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羽衣物語(2)
日期:2022-12-04 08:16  点击:260
 


そのこえき、その姿すがたて、これが、このひとであろうかと、若者わかものは、自分じぶんをうたがわずにはいられませんでした。すぐには、かえ言葉ことばなかったのです。
「その着物きものを、どうぞおかえしくださいまし。」と、おんなかさねていいました。
若者わかものは、着物きものぬしがわかると、いままでのたのしかったゆめやぶれて、がっかりしました。またとはいらぬたからおもえば、なおさらしかったのです。
若者わかものは、
「せっかく、わたしひろいましたものを、どうぞ、てたとあきらめなされて、これをわたしにくださいませんか。」と、あたまげてたのみました。
こうくと、おんなは、ぱっちりをみはって、さも、たまげたというようすで、
「なんとおっしゃられます。その着物きものを、どうしてあなたにさしあげられましょう。それをなくては、わたしそらかえることができません。」と、こたえました。
「や、や、それなら、あなたは、まさしく天女てんにょでいらっしゃいますか。道理どうりで、人間にんげんにしては、あまりりっぱすぎるとおもいました。」と、きゅう若者わかものは、ようすをあらためました。
らぬひとから、こうしてられるのを、さもずかしげに、天女てんにょは、ただうついていました。
はなし天女てんにょ羽衣はごろもとは、これでございますか。」
「さようでございます。」
たぐいなくうつくしいとおもうのもそのはず、天女てんにょであったかと、若者わかもの感動かんどうは、しばらくしずまりませんでした。けれど、天女てんにょは、てんにいるものとばかりしんじたのを、どうしてこんなところへりたのであろうか、とかずにはいられませんでした。
「あなたは、どうしてこんなところへおりになったのですか?」と、若者わかもの天女てんにょかって、たずねました。
天女てんにょは、こうわれると、ためらいながらかおをあげ、
「ここの景色けしきがあまりみごとなものですから、ついりてみるになりました。」と、こたえたのであります。

うつくしいものにとれるのは、ひとり人間にんげんばかりでなく、てんにすむ天女てんにょも、おなじであるのをると、自分じぶんがきれいな羽衣はごろもをほしくおもうのも、わるいことではないようながして、若者わかものは、そのうえともしつこく、天女てんにょかってたのみました。
「ごむりのおねがいかもしれませんが、このきれいな着物きものを、どうぞ、わたしにおあたえくださいまし。ながくたからにしたいとおもいます。」
これをいて、天女てんにょはあきれたのであろう。が、しばらく言葉ことばもありませんでした。
「どうしても、おゆるしになりませぬか。」と、若者わかものがいうと、天女てんにょかおには、かなしみのいろがただよって、ついにくちをひらきました。
「その着物きものなくては、二てんへはかえれません。人間にんげんにはやくにたたぬものですが、天女てんにょには、なくてはならぬ着物きものでございます。」といって、うつむきました。
若者わかものは、片言かたこときもらすまいと、みみをかたむけていましたが、天女てんにょが、羽衣はごろもなければてんかえれぬといったので、これはなんたる自分じぶんにとって、しあわせなことであろう。そうすれば、このうつくしいひとむらへつれもどって、いつまでも、とめておくことができるとおもったのでした。
「そうけば、なおさら、この着物きものをおかえしすることはできません。」
「それはまた、どうしたことでございますか。」
天女てんにょは、おどろいてかおげ、をぱっちりとひらいて、若者わかものました。
羽衣はごろもより、あなたのほうが、もっともっとうつくしいのであります。羽衣はごろもがなければ、てんかえれぬとおきしては、あなたを、いつまでもおとめしたいばかりに、羽衣はごろもをおかえしすることができなくなりました。」と、若者わかもの正直しょうじきもうしました。
天女てんにょのからだは、おそろしさのあまりふるえ、顔色かおいろあおざめてえました。これをると、若者わかものは、こういったのも、天女てんにょのようなうつくしいひとのそばにいたいためであり、すこしもわるこころからではないのだ。どうか、それを天女てんにょにさとってもらいたいとおもいましたので、
天女てんにょさま、こうもうしますのも、おずかしいはなしながら、わたしはまだ、ひとりものなのでございます。もし、あなたさえご承知しょうちになって、わたしつまにおなりくださるならば、あなたのために、このいのちもささげます。ただ、人間にんげんとして、天上てんじょうのあなたをおしたいするのは、つつしみのないことかもしれませぬけれど、うつくしいものをあいするこころに、かみひともかわりないならば、どうぞ、わたしねがいをおれくださいまし。」と、ねんごろにうったえました。
天女てんにょは、にごりけのない若者わかものこころ感動かんどうするとともに、自分じぶんにもがあったのをさとりました。こんなことになるのも、自分じぶん軽率けいそつからであった。うかうかと、地上ちじょうりさえしなければ、何事なにごともなかったと、後悔こうかいしました。
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