花と人の話(2)
日期:2022-12-05 23:59 点击:281
それでも
大学生は、アネモネを
大事そうに、
机の
上にのせておきました。
大学生は、
夜おそくまで、
机の
上に
書物を
開いて
勉強をしました。そして、
朝は
起きるのが
遅かったのです。
アネモネは、
午後の
西日が
障子の
上を
照らすのを
見たばかりで、
自身は、
日に
照らされることがありませんでした。
花は、あの
花屋の
店先を、どんなに
恋しく
思ったでしょう。
下宿屋の
女中は、
花などには
無関心でした。すこしの
考えもなくそうじなどをしましたから、
赤いアネモネの
花は、
頭からほこりを
浴びさせられました。
大学生は、はじめの二、三
日は、
花に
気をとられながら、ながめたり、
水をくれたりしましたが、その
後は、
忘れてしまったように、
水もくれませんでしたから、
土は
湿り
気がなくなって、
花は
枯れかかったのです。
ある
朝、
学生は、
起きて、ふと
花をながめました。
「
元気がなくなったな。」と、
学生は、
独り
言をしました。
ちょうどすこし
前に、
女中が
朝飯のお
湯を
持ってきたののです。
学生は、
乱暴にも、まだ
冷えきらない、
暖かなお
湯を
花にかけながら、
「だいじょうぶ
枯れはしまい。
水を
取りにゆくのもめんどうだ。」
学生は、こういいました。
しかし、
花はそのために、
葉がしおれてしまいました。そして、じきに
枯れてしまったのです。
甲の
身の
上、
乙の
身の
上を
思って、
最後に
残った
丙のアネモネは、しばらくさびしい
日を
送っていました。
ある
日、十二、三になった
男の
子が、
二人連れでやってきました。
「これはなんという
花だい。」
と、
一人がいいました。
「アネモネの
花だよ。」
と、もう
一人が
答えました。
「きれいな
花だね。」
「これを
買っていこうか。」
アネモネは、もしこの
子供らに
買っていかれたら、どんな
乱暴のめにあうかもしれないと、びくびくしていました。
二人の
子供は、このアネモネを
買いました。そして、
二人は、さも
大事そうにこのアネモネの
鉢をかかえて、
家へ
帰りました。
子供らは、いろいろの
花が
植わっている
庭へ
持っていきました。その
庭は、たいそう
日当たりがよかった。ちょうもくれば、みつばちもやってきたのです。
子供は、
毎朝起きると、すぐに
花のところへやってきました。
そして
土が
乾くと、
水をくれました。
学校から
帰ってくると、
花を
日のあたるところへ
出して、また、そこがかげると、ほかの
場所へ
移してくれました。
花は、
二人の
子供にかわいがられました。
花も、
子供がやさしいので、すっかり
子供が
好きになってしまいました。
そして、
長い
間その
庭で
咲いていました。
が、
時節がきた
時分に、だんだん
花は
終わりに
近づいて
衰えてゆきました。
「この
根をしまっておいて、また
来年の
春になったら
植えて
咲かそうね。」
と、
二人の
子供はいいました。
花は、どんなに、これを
聞いてうれしかったでしょう。
来年の
春も、また、そのつぎの
年の
春も
咲いて、
子供と
仲よくしようと
思いました。
花が
終わったとき、
子供らは、その
根を
乾してから、これを
袋の
中へ
入れて、その
上に「アネモネ」と
書いて、しまっておきました。
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