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日の当たる門(2)
日期:2022-12-07 23:59  点击:215
 
その翌日あくるひもいい天気てんきでした。このもんのところには、朝早あさはやくからたっていたのです。
炭屋すみや小僧こぞうさんが、へいによりかかって、ぼんやりとひなたぼっこをしていました。よるあいだりた霜柱しもばしらが、ひかりをうけて、しだいにとけています。敷石しきいしうえかわいているが、つちうえをふむとあしあとがつきました。
「もう、得意とくいをまわったのか、はやいなあ。」と、そこへやってきたのは、おなとしごろの酒屋さかや小僧こぞうさんでありました。
さむくてしようがないや。」
「そんなにふとっていてもさむいかなあ。」
「ばかいっていらあ、おまえはさむくないか。」と、炭屋すみや小僧こぞうさんが、いいました。
相撲すもうとろうか、おまえはつよそうだな。」と、酒屋さかや小僧こぞうさんが、いいました。
「おまえとなら、けやしない。」
「じゃ、こい!」
「よしきた。」
二人ふたり小僧こぞうさんは、たるまえ石畳いしだたみうえで、たがいにしあい、もみいしていました。うん、うん、といううなりごえがきこえたのです。うめ盆栽ぼんさい縁側えんがわにおいて、ながめていたおじいさんは、小僧こぞうさんたちのうなりごえをきいて、なんだろうとおもいました。
「また、うちのもんのところでさわいでいる。あすこは、よくたるものだから、いいことにして、みんなあすこへきて、へいによりかかって、きれいにしておくいしうえをよごしてしまう。どれ、ひとつどなってやろうか。」
おじいさんは、わざと勝手かってもとから、もんほうへまわりました。そして、へいについている節穴ふしあなから、そとのようすをのぞいてました。すると、いま二人ふたり小僧こぞうさんがかおにして、たがいにけまいとしてんでいる最中さいちゅうでした。
「ははあ、やっているぞ。」と、おじいさんは、しかることをわすれてしまって、じっと、どちらがつか、けるか、とれていました。
「そうだ、そうだ、もうひとしだ。」と、おじいさんは、自分じぶんでもりきんでいました。そして、こころに、五十ねんむかしともだちと相撲すもうをとったことをおもこしたのです。
「そうだ、そうだ、うん、どちらもなかなかつよいぞ。」と、くちなかで、おじいさんは、いっていました。
二人ふたり小僧こぞうさんは、どちらもちからがあって、いい勝負しょうぶだったが、炭屋すみや小僧こぞうさんのほうがふとっているだけに体力たいりょくがつづくとみえて、酒屋さかや小僧こぞうさんはへとへとになって、石畳いしだたみうえたおれてしまいました。
「やっぱり、おれはよわいなあ。」と、酒屋さかや小僧こぞうさんはためいきをつきながら、悲観ひかんしました。おじいさんは、
「なんだ、そんないくじがないことでどうする。もう一ばんやってみろ。」と、こころなかで、さけびました。
「どれ、もう一やろうか。」と、酒屋さかや小僧こぞうさんは、がりました。けれど、こんどは、なんのもなく、炭屋すみや小僧こぞうさんに、たたきつけられてしまいました。
「おまえなんか、いくらかかってもだめさ。」と、炭屋すみや小僧こぞうさんは、威張いばりました。酒屋さかや小僧こぞうさんは、いかにもくやしそうです。これから、毎朝まいあさみちであっても、炭屋すみや小僧こぞうさんにあたまがらないとおもうと、残念ざんねんでたまりません。
「おい、もう一やろう、今度こんどけたら、降参こうさんするよ。」と、酒屋さかや小僧こぞうさんは、いいました。おじいさんは、
「そうだ、その意気いきだ、しっかりやれ。」と、こころなかで、酒屋さかや小僧こぞうさんに応援おうえんしながら、へい節穴ふしあなからをはなしませんでした。
「いいか、今度こんどけたら降参こうさんするんだぜ。」
「いいとも。」
二人ふたりは、たがいににらみあって、しろいきをはあはあやっていましたが、酒屋さかや小僧こぞうさんは、弾丸だんがんのように、相手あいてむねんでいきました。二人ふたりかおが、たちまちになりました。さあ、今度こんどこそ大相撲おおずもうです。一人ひとりふとってちからあまっているし、一人ひとりは、ければはじになるだけでなく、いよいよ降参こうさんしなければなりません。どうしてもけられない一ばんです。ているおじいさんまでが、くるしくなってきました。
「うん。」
「うーん。」
二人ふたりは、うなりつづけて、ったまましたり、かえしたりして、相手あいてのすきをねらっていました。
「うーん。」と、おじいさんもうなって、自分じぶんまでが相撲すもうをとるような気持きもちでいました。ちょうど、そこへ女中じょちゅうが、
「また、あすこへきて、石畳いしだたみうえをよごしている。」と、くちこごとをいいながら、お勝手かってもとからてくると、おじいさんは、でこちらへきてはならぬとかえしました。なんといっても、酒屋さかや小僧こぞうさんは、いっしょうけんめいです。うん、うん、炭屋すみや小僧こぞうさんをしていましたが、炭屋すみや小僧こぞうさんは、よくこらえていました。
「もうひといき。」と、おじいさんが、いったと同時どうじに、酒屋さかや小僧こぞうさんがここぞとしたちからに、炭屋すみや小僧こぞうさんはどっと仰向あおむきにたおされて、ミシ、ミシといって、へいいたはこわれました。酒屋さかや小僧こぞうさんは、ったよろこびもどこへやら、きゅうかおいろえて、たおれた炭屋すみや小僧こぞうさんと、こわれたへいとをくらべましたが、
「よし、よし、へいなんか、かまわない。おもしろかったよ。」と、おじいさんが、ふいにもんそとましたので、二人ふたり小僧こぞうさんは、二びっくりして、おじいさんに、いくたびもあたまをペコペコげて、いってしまいました。
「ああ、子供こども元気げんきでいいなあ。」と、おじいさんは、そら見上みあげました。そのおじいさんのかおて、太陽たいようは、にっこりとわらいました。それからおじいさんは、子供こどもいえまえへきてあそんでも、しからなくなったのであります。
 

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