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風雨の晩の小僧さん(2)
日期:2022-12-07 23:59  点击:216
 
ははむすめは、戸外こがいさけ雨風あめかぜおとみみまして、火鉢ひばちのそばでおはなしをしていました。それはよるの八ごろでありました。
となりのペスが、垣根かきねうちからしきりにほえているのがこえます。このいぬは、らぬひとるとよくほえるいぬで、いつか郵便屋ゆうびんやさんが、手紙てがみ配達はいたつができないとおこっていたことがありました。その、しばらくくさりでつないであったが、またこのごろは、はなしておくようであります。
「よくほえるいぬだこと、なににほえているのでしょうね。」と、かねは、んでいる雑誌ざっしからげて、そとのけはいをるようにしていました。
「あのいぬがいると用心ようじんはいいけれど、そととおる、なんでもないひとまでが迷惑めいわくしますね。」と、おかあさんは、むすめ正月しょうがつあか色合いろあいのった衣物きものいながら、おっしゃいました。
「ごめんください。」
このとき、玄関げんかんのあたりで、ちいさいこえがしました。そのこえは、雨風あめかぜおとに、半分はんぶんされてしまったのです。
「だれかきたのでない?」
「どなた!」といって、おかあさんは、がられました。かねは、全神経ぜんしんけいをおかあさんの足音あしおとえていくほうあつめていました。
「まあ、このあめに、とどけていただいたのですか、すみませんでしたねえ。」
かあさんの、こういっていられる言葉ことばくと、
「オーバーシューズが、できてきたのだわ。」と、かねは、すぐにはしって、おかあさんのところへいきました。
「かね、この雨風あめかぜなかってきてくださったのだよ。」
かあさんは、くつ小僧こぞうさんにたいして、こころからねぎらっていられました。かねは、いままで不平ふへいがましいことをいったのが、なんだか気恥きはずかしくかんじられて、かおあからめました。しかし、さすがによろこびをきんじられなかったのです。そして、そこに、やっと十二、三の少年しょうねんが、ぬれねずみになってっているのをると、目頭めがしらあつくなりました。軒燈けんとうが、マントをらして、ながちるしずくがひかっています。
「おあしいますでしょうか?」と、ふろしきをいて、オーバーシューズをして、少年しょうねんはいいました。
「そうですね、だいじょうぶでしょう。かね、ちょっとくつにうか、ててごらんなさい。」と、おかあさんは、おっしゃいました。
かねは、玄関げんかんわきのだなをけて、くつをしました。そして、オーバーシューズをはめてみますと、すこしちいさいようです。
「どれ、わたしにおせなさい。」と、おかあさんは、かねからオーバーシューズをって、みずからくつにはかせようとしましたが、やはりちいさくてはいらないのでした。これをていた、小僧こぞうさんは、
「すこしちいさいようですね。ってかえりましてなおしてまいりましょう。そして、明朝みょうちょうはやくおとどけいたします。」といいました。
あさは、学校がっこうはやいのですから、七までにってきてもらわないとまにあわないのですよ。」
承知しょうちいたしました。」
小僧こぞうさんは、オーバーシューズをつつんできたふろしきへふたたびつつみかけていました。
「この雨風あめかぜなかをせっかくってきてもらっておどくですね。」
「どういたしまして、こちらがわるいのです。寸法すんぽうをまちがえましてすみません。」
小僧こぞうさんは、丁寧ていねいにお辞儀じぎをしてかえってゆきました。
それを見送みおくっていた、かねさんは、小僧こぞうさんの姿すがたやみなかえなくなる時分じぶん
「かわいそうね。」と、しみじみとした調子ちょうしで、おかあさんにかって、いいました。
「みんな、ああして修行しゅぎょうをして、おおきくなって、いい商人しょうにんになるのですよ。」と、おかあさんは、いって、しばらくかんがえていらっしゃいました。
*   *   *   *   *
信吉しんきちは、朝早あさはやますと、昨夜さくやからのあめは、まだやまずにりつづけていました。
「そうだ、おじょうさんの学校がっこうへいかれるまえに、オーバーシューズをおとどけしなければならない。」
かれは、きると、はやくそうじをすまして、あめなかかける仕度したくをしました。昨夜さくやは、はじめてのみちあるいて、いえさがすのにずいぶんほねがおれたけれど、今日きょうは、その心配しんぱいがなかったのです。
「ああ、ここだったな。」と、かれは、いぬにほえられたいえまえへくるとおもしました。
このあめでは、ああいったけれど、小僧こぞうさんは学校がっこうへいくまえにはとどけられないだろうと、食卓しょくたくかって、かねおもっているところへ信吉しんきちは、ちょうど玄関げんかんけてはいったのです。
これにたいして、かねもおかあさんも感心かんしんしてしまいました。そして、二人ふたりは、いっしょに玄関げんかんしてきておれいをいったのでした。
信吉しんきちは、ただ約束やくそくまもって、なすべきことをしたまでだとおもったが、こうして感謝かんしゃされると、自分じぶんからだがいくらあめにぬれてもうれしかったのであります。
その故郷こきょう父親ちちおやからひさしぶりに便たよりがありました。今年ことしなつは、ひじょうにあつかったかわりに、作物さくもつがよくできて、むらは、景気けいきがよく、みんながよろこんでいる。でも、ごろからほしいとおもったうしを一とうったといてありました。信吉しんきちは、こころなかで、いくたびも万歳ばんざいさけんだのであります。
 

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