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ペスときょうだい_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3385
 
ひとり、達たっちゃんばかりでありません。みんなは、政まさちゃんの、いうことをきいて、ほんとうだと思おもいました。平常ふだん、かわいがっていながら、ペスが、犬殺いぬころしに、つれられていったと知しっても、もらいにいってやらぬというのは、なんたる不人情ふにんじょうなことだろう。ペスは、心こころのうちできっとだれかもらいにきてくださると思おもっていたのにちがいない、そして、とうとうだれもきてくれないと知しると、死しにもの狂ぐるいで逃にげ出だしてきたのだ。心こころのうちで、みんなの不人情ふにんじょうをうらんでいるのだ。もうけっして、人間にんげんを信しんじてはならない。それは、政まさちゃんの、いうとおりだと思おもったからです。
「まあ、それにしても、よく逃にげ出だして、きたものね。」とお姉ねえさんは、感嘆かんたんなさいました。
「生いきたい、一念ねんで、逃にげ出だしてきたのでしょう。」と、お母かあさんも、おっしゃいました。
「ワン、ワン、ほえたり、かみついたりしたんだろうな。」と、正しょうちゃんが、いうと、
「ばか、そんなことをすれば、すぐなぐり殺ころされてしまうじゃないか。」と、達たっちゃんがいいました。
「そんなら、どうして、逃にげてきたんだい。」と、正しょうちゃんが、ききました。
「すきを見みて、いっしょうけんめいに逃にげてきたんだろう。」と達たっちゃんがいいました。
その夜よは、ペスが帰かえってきたことにして、みんなは、いろいろ話はなしをしましたが、夜よが、明あけたら、それを、たしかめようと、達たっちゃんと、正しょうちゃんとは、めいめい胸むねに思おもって、やがて、床とこの中なかに入はいったのであります。寒さむい晩ばんで、木枯こがらしの音おとがきこえていました。床とこにはいってからも、正しょうちゃんは、風かぜの音おとに耳みみをすまして、逃にげてきた、かわいそうなペスのことを思おもって、なかなか眠ねむりつかれなかったのでした。
翌日よくじつは、日曜日にちようびでした。朝飯あさはんを食たべると、正しょうちゃんは、外そとへ駆かけ出だしてゆきました。往来おうらいで、徳とくちゃんたちが、遊あそんでいました。徳とくちゃんは、政まさちゃんと同おなじ年としごろでした。
「徳とくちゃん、ペスが帰かえってきたって、ほんとうかい。」
正しょうちゃんは、徳とくちゃんの顔かおを見みると、すぐこうたずねました。
「ああ、昨日きのう見みたよ。」と、徳とくちゃんは答こたえたのです。
「ほかの犬いぬだろう。」
「そうじゃない、ペスだよ。日ひの丸まるが、ついていた。」と、徳とくちゃんは、いいました。
「日ひの丸まるが、ついていた?」と、正しょうちゃんは、念ねんを押おしました。日ひの丸まるというのは、ペスの白しろい脊中せなかに赤あかい毛けのまるい斑ぶちがあったので、みんながそういっていたのでした。
「日ひの丸まるがあったよ。」と、徳とくちゃんははっきり答こたえました。
そうきけば、もうペスの帰かえってきたのに、疑うたがう余地よちがなかったのです。正しょうちゃんは、走はしって、家いえへもどると、その話はなしを達たっちゃんにしたのです。
ちょうど、そのとき、小田おだと高橋たかはしが、釣つりざおとバケツを下さげて達たっちゃん兄弟きょうだいを誘さそいにきました。日曜日にちようびに、川かわへ寒かんぶなを釣つりにゆく、約束やくそくがしてあったからです。
「どうしよう? ペスをさがしにゆくのをよして、釣つりにゆこうか。」と、正しょうちゃんは、兄あにの達たっちゃんを見上みあげました。
「おまえは、釣つりにいってもいい。僕ぼくは、ペスをさがしにゆくから。」と、達たっちゃんが答こたえました。
小田おだも、高橋たかはしも、よくペスのことを知しっていました。達たっちゃんと正しょうちゃんの話はなしをきくと、
「僕ぼくたちも、いっしょに、ペスをさがしにゆこう。そして、はやく見みつかったら、みんなで釣つりに出でかけよう。」と、小田おだがいいますと、高橋たかはしも賛成さんせいしました。
「釣つりざおとバケツを、ここに置おいてくれない。」
やがて、みんなが、一団だんとなって、ペスをさがしにゆきました。その中なかに、小ちいさい政まさちゃんもはいっていました。
橋はしのところから、ペスのいったという、道みちを歩あるいて、原はらっぱへ出でて、半分はんぶんは、散歩さんぽの気分きぶんで、愉快ゆかいそうに話はなしながら、足あしの向むく方ほうにあるいていったのであります。
あちらに、自動車じどうしゃや、自転車じてんしゃの走はしっているのが見みえる、駅えきの付近ふきんにきたとき、
「ほら、あすこに、ペスがいるじゃないか。」と、ふいに政まさちゃんが、指ゆびさしました。見みると、なるほど、牛肉屋ぎゅうにくやの前まえに白しろい毛けに日ひの丸まるの斑ぶちのはいった、ペスそっくりの犬いぬがいました。
「ペスかしらん。」と、正しょうちゃんは、駆かけ出だしてゆきました。あとから、みんながつづきました。しかし、その犬いぬは、ペスと兄弟きょうだいのように似にていたけれど、やはり、ペスではありませんでした。政まさちゃんや、徳とくちゃんの見みたのは、この犬いぬだとわかると、みんなは道みちをもどることにしました。
「ああ、ペスは、もう殺ころされてしまったのだろう。」といって、中なかにも、達たっちゃんと正しょうちゃんは、ペスを助たすけなかったのを、後悔こうかいしながら、木枯こがらしの吹ふく中なかを、みんなと歩あるいていたのです。
 

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09/29 09:28