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ボールの行方(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 
すると、さすがにめずらしい宝石ほうせきだけあって、あかみどりあおむらさきかがやいて、どれがほかのものよりおとるということなく、とれずにはいられなかったのであります。
みなみくにへさえってゆけば、一つがいくりょうにもなる品物しなものばかりだ。これをやるのはしい。こんなに高価こうかなものをおれいにする必要ひつようはないのだ。どうせ、今度こんどきた時分じぶんに、なにかってきてやれば、それで義理ぎりがすむのだ。」と、宝石商ほうせきしょうかんがえなおしました。そして、そのいしをみんなもとのとおりつつんでかくしてしまいました。
おばあさんや、むすめは、宝石商ほうせきしょうてしまってから、なおきて仕事しごとをしていました。
くるはいい天気てんきでした。宝石商ほうせきしょうは、いさんで旅立たびだちの支度したくにかかりました。
「いろいろお世話せわになりましてありがとうぞんじます。なにかおれいをすればいいのですが、いまはなにもわせがありません。いずれまたこの地方ちほうにきましたときに、おれいをいたします。」
と、宝石商ほうせきしょうはいいました。
「なんのおれいなんかいるものですか。このみちをまっすぐにおいでなさるとまちます。道中どうちゅうをつけておゆきなさいまし。」といって、二人ふたり見送みおくってくれました。
宝石商ほうせきしょうは、それから幾日いくにちたびをしました。やまえ、かわわたり、あるときはふねり、そして、みなみくにして、たびをつづけました。やっと、みなみくににきて、にぎやかな金持かねもちのたくさんにんでいるまちたずねますと、どうしたことか、そのまちつかりませんでした。そして、そのあとこわれたかべや、れたなどがっていました。
宝石商ほうせきしょうは、ゆめるような気持きもちがしたのです。そして、そこをとおりかかったひとに、このまちはどうなったのかといってたずねました。
「二ねんばかりまえ大地震おおじしんがあって、そのとき、このまちはつぶれてしまいました。」と、そのひとはいいました。
「どこへみんないってしまったのですか。」と、宝石商ほうせきしょうは、むかし繁華はんか姿すがたおもいうかべてたずねました。
「みんなちりぢりになってしまったのです。そのとき、んだひともたくさんありました。また、ここからもっとみなみほうまちうつったものもございます。」と、そのひとはいいました。
宝石商ほうせきしょうは、がっかりしてしまいました。せっかく、このまち金持かねもちをあてにして、わざわざとおきたくにからやってきたのに、むなしくかえらなければならぬということは残念ざんねんでたまりませんでした。
かれは、海岸かいがんにきていわうえこしろして、ぼんやりとうみをながめながらかんがえていたのです。
「もっと、みなみほうへいったら、また、金持かねもちのんでいるまちがあるかもしれない。そのまちをたずねてゆこうか?」と、思案しあんにくれていたのです。
そのとき、太陽たいようは、西にしうみしずみかかっていました。うみうえ真紅まっかえています。宝石商ほうせきしょうは、また、これからのながたびのことなどをかんがえていましたときに、不意ふい大波おおなみがやってきました。そして、そばにいた宝石ほうせきつつみをさらっていってしまったのです。
宝石商ほうせきしょうは、くるわんばかりにあわてたのです。けれど、どうすることもできなかったのであります。一かしたすえに、
「もう一きたくにへゆこう。そして、宝石ほうせきさがしてこよう。」と、かれおもいました。それよりほかにいい方法ほうほうがなかったからであります。
宝石商ほうせきしょうは、このそんをきっとつぐなうだけの宝石ほうせきをもう一きたくにへいってあつめてこなければならないと決心けっしんしました。かれあたまなかはそのことでいっぱいになりました。
かれは、ひるよるも、ろくろくねむらずに、宝石ほうせきのことばかりかんがえてきたくににやってきました。
きたくにゆきしろでありました。そして、さむかぜいていました。まちから、まちへとあるきましたが、一自分じぶんあるいたまちには、もうめずらしい宝石ほうせきつかりませんでした。
すると、宝石商ほうせきしょうは、いまさら、うしなったあかあおみどりむらさき宝石ほうせきしくてしかたがなかったのです。よるそとって、そのことばかりかんがえていました。
このとき、あおあかみどりむらさき宝石ほうせきが、にもあざやかに、こおったゆきうえいとにつながれたままちていてかがやいているのです。かれは、うれしさにむねがおどって、それをひろおうとしました。すぐまえちていたとおもった宝石ほうせきのくびかざりは、いくらいっても距離きょりがありました。かれは、血眼ちまなこになって、ただそれをひろおうとゆきなかみちのついていないところもかまわずにしたのでありました。そして、つかれて、がくらんでついにゆき野原のはらなかたおれてしまいました。
そのは、いつになくそ�/rb>しろでありました。そして、さむかぜいていました。まちから、まちへとあるきましたが、一自分じぶんあるいたまちには、もうめずらしい宝石ほうせきつかりませんでした。
すると、宝石商ほうせきしょうは、いまさら、うしなったあかあおみどりむらさき宝石ほうせきしくてしかたがなかったのです。よるそとって、そのことばかりかんがえていました。
このとき、あおあかみどりむらさき宝石ほうせきが、にもあざやかに、こおったゆきうえいとにつながれたままちていてかがやいているのです。かれは、うれしさにむねがおどって、それをひろおうとしました。すぐまえちていたとおもった宝石ほうせきのくびかざりは、いくらいっても距離きょりがありました。かれは、血眼ちまなこになって、ただそれをひろおうとゆきなかみちのついていないところもかまわずにしたのでありました。そして、つかれて、がくらんでついにゆき野原のはらなかたおれてしまいました。
そのは、いつになくそられていました。さえわたった大空おおぞらに、あおあかみどりむらさきほしひかりが、ちょうど宝石ほうせきのくびかざりのごとくかがやいていたのであります。さむかぜは、かなしいうたをうたってゆきうえいて、木々きぎのこずえは身震みぶるいをしました。永久えいきゅうしずかなきたくに野原のはらには、ただなみおととおこえてくるばかりでありました。
あわれな宝石商ほうせきしょうは、ついにこごえてんでしまったのです。くるあさのからすがその死骸しがい発見はっけんしました。
――一九二〇・一二作――
 

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