正ちゃんは、またボールをなくしてしかられると
思ったけれど、
「みんなで
遊んだのだもの、そんなことしなくてもいいよ。お
母さんに
買ってもらうから。」と、いいました。
「
僕、たのんで
入れてもらったのだから。」と、いいますので、
太郎さんが、
「じゃ、
正ちゃん、それでいいじゃないか。」と、いいました。
四
人は
学校の
前へいって、お
店でボールを
買いました。
正ちゃんが、
「また、ボールをやらない?」というと、
誠さんも
太郎さんも
賛成しましたが、
少年はお
使いにきたのでもうかえらなければならないといいました。
「さようなら!」
「また、おいでよ。」
少年は三
人とわかれて、さっさといってしまいました。
正ちゃんは、
少年の
買ってくれた
新しいボールを
見て、なんだかいい
気持ちはしなかったのです。
「
気のどくなことをしたな。どうしても
買ってもらわなければよかったのに。」と、
心のうちで
思いました。
正ちゃんは
家にかえると、お
母さんにそのボールを
見せて
今日の
話をしました。
「どこの
坊ちゃんですか?」と、お
母さんはおききになりました。
「
僕、
知らない。」と、
正ちゃんが
答えると、
「これから、そんなときは、いいと、ことわるものですよ。」と、お
母さんはおっしゃいました。
あくる
日、
正ちゃんは
花子さんと
原っぱで
遊んでいました。
「
正ちゃん、ここへきてごらんなさい。ありがなにかはこんでてよ。」と、
花子さんがよびました。
正ちゃんが
走っていくと、かわいらしい
小ちゃなありのむれが、なにかくわえて、
列をつくって
走っているのです。
「
花子さん、もう
冬のおしたくで、いっしょうけんめいなんだよ。」
だんだんとつながり
進んでいくありのむれを、
二人は
足ずりして
追っていくうちに、
正ちゃんは
昨日なくしたボールが、
枯れ
草の
中にかくれているのを
見つけました。
「ボールがあった!」
正ちゃんはよろこびの
声を、あげました。そして、なつかしい
自分のボールをにぎって、しばらくぼんやりとしていました。
「どうしたの、
正ちゃん? なくしたボールが
見つかったの?」
「
僕、なくなったと
思っていたら、あったのだよ。あの
子に
弁償してもらって、どうしようかなあ。」と、
正ちゃんはポケットからもう一つのボールを
出して
考えていました。
「
誠さん?
太郎さん?」
「
知らない、あっちの
子だよ。」
「きのう?
太郎さんくらいの
子でしょ?」
「そうだよ。」
「
牛込の
兄さんだわ。
正ちゃんたちがボールをしていると
私がいったら、
兄さんはとんでいったわ。」と、
花子さんがいいました。
「じゃ、このボール、
兄さんにかえしておくれ。」
「こんどきたら、かえしてあげるわ。」
正ちゃんは
花子さんに、
少年の
買ってくれたボールをわたすと、
気もちがらくらくとしました。
そして、
自分のボールを
力いっぱい
空に
向かって
高く
投げあげたり、
受けたりして、
遊んだのであります。