日语学习网
僕はこれからだ(3)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 

星と柱を数えたら

小川未明


あるところに、ひろはたけと、はやしと、花園はなぞのと、それにたくさんな宝物たからものっているひとんでいました。このひとは、もうだいぶの年寄としよりでありましたから、それらのものを、二人ふたり息子むすこたちにけてやって、自分じぶん隠居いんきょをしたいとおもいました。
けれど、あにのほうも、おとうとのほうも、そろってなまものでありました。あにのほうは、一にち仕事しごともせずに、ぶらぶらといえなかあそんでいました。そして、はたけはたらいたり、そとあるいたりすることがだいきらいでありました。
おとうとのほうは、あにとちがって、すこしもうちにおちついて勉強べんきょうをするということがなかったのです。一にちそとあそびまわって、れるといえおもしてかえってくるというふうでありました。しかし、はたけはたらくということは、あにおなじようにだいきらいでありました。
二人ふたり息子むすこたちが、こんなふうになまものでありましたから、父親ちちおやはほんとうにこまってしまいました。すえのことなどがあんじられて、どうかして、いい子供こどもになってくれぬものかと、そればかりこころねんじていました。
いくら、二人ふたりかって、「仕事しごとをせよ。」といったり、また、「はたらけよ。」といっても、ぬかにくぎでありました。
そのうちに、父親ちちおやは、だんだんとしをとって、ますます二人ふたりのことをかんがえるとになってならなかったのです。あるのこと、ふと、父親ちちおやは、なにかかんがえると、二人ふたり自分じぶんまえびました。あにおとうとは、なにごとだろうとおもって、父親ちちおやまえにすわって、かおをながめました。
わたしは、もうだいぶとしった。はや財産ざいさんをおまえがたにけてやって、隠居いんきょをしたいとおもう。けれど、そのかわりおまえがたは、わたしのいいつけたことをしなければならない。」と、父親ちちおやはいいました。
「おとうさん、わたしたちのできることなら、なんでもいたします。むずかしいことでなければ。」と、あにおとうとはいいました。
父親ちちおやは、あにかって、
「おまえは、そとあるくことがきらいだから、よるになったら、そらほしかずかぞえてみれ。えるのだけ、いくつあるか、てたなら財産ざいさんけてやる。」
父親ちちおやは、おとうとかって、
「おまえは、毎日まいにち出歩であるくことがきだから、このむらはずれから十あちらのまちるまで、電信柱でんしんばしらかず幾本いくほんあるか、かぞえてみれ。それをてたら財産ざいさんけてやる。」
こう、二人ふたりにいいました。あにおとうとは、たがいにこんなことはぞうさもないことだとこたえました。
おとうとは、すぐに出発しゅっぱつしました。あには、れるのをって、そとしたこしをかけました。そして、よくれわたったよるそらあおぎました。あおい、あおい、奥底おくそこから、一つ、一つほしひかりかがやきはじめて、いつのまにか大空おおぞらは、まいたようにほしがいっぱいになったのです。
あには、一つ、二つとかぞえました。しまいには、ゆびつかれ、つかれましたけれど、我慢がまんをして、「財産ざいさんがもらえるのだ。」とおもって、かぞえました。すると、そのうちにくもてきてほしひかりかくしてしまいました。あには、がっかりして、またくるも、したにすわってかぞえました。今度こんどは、だいぶかぞえたかとおも時分じぶんかぜてきて、をさらさらとらしたので、ふとそのほうられると、せっかくかぞえたのをわすれてしまいました。あには、がっかりして、したたおれてねむってしまいました。あさになると、小鳥ことりえだまって、「もうけた。とっくにのぼった。」といって、わらっていました。
おとうとは、電信柱でんしんばしらを一ぽんずつかぞえてゆきました。はじめのあいだひろ街道かいどうあるいてゆきますので、あそんでいるようでしたが、しまいには、なかといわず、さびしいやまなかといわず、とてもあるいてゆけそうもないところにっていまして、それを一つ一つかぞえることは困難こんなんでありました。
「どうして、こんなところへ、だれがはしらてたろう。」と、おとうとは、感心かんしんしながら、すごすごといえかえってきました。すると、あにが、やはりほしかぞえることに絶望ぜつぼうをして、ためいきをもらしていました。二人ふたりは、父親ちちおやまえました。
「おとうさん、えることすら、こんなにることは困難こんなんなのです。これからこころをあらためて勉強べんきょうします。」といいました。こうして二人ふたりは、まことにいい息子むすこたちとなりました。

分享到:

顶部
11/18 13:29