星の世界から(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29 点击:3334
三
良吉はしかたがないから、
林の
中に
入って
竹を
切ってきて、
自分でそれに
小さな
穴をあけて
笛を
造って
吹いていました。すると、四
方から
小鳥がそれを
聞きつけ
集まってきて、
近間の
木の
枝に
止まってその
笛を
自分らの
友だちだと
思っていっしょになってさえずっていました。この
有り
様を
見ると
力蔵はすぐに
良吉の
持っている
笛が
欲しくなりました。
「
君にオルゴールを
貸してあげるから、その
笛を
僕にくれないか。」
と、
今度力蔵は
良吉に
向かって
頼みました。
良吉は
快く
承諾して、その
笛を
力蔵に
与えました。そして、
自分ははじめてオルゴールを
手に
持つことができて
大事そうにして、この
不思議な
音色のする
機械をながめていました。すると
力蔵はすこしばかりたつと
彼のそばにやってきて、
「
僕はもう
家へ
帰るんだから、オルゴールを
返しておくれ。」
といって、
良吉からそれを
取り
返して
持ってゆきました。その
後で、
良吉はさも
名残惜しそうにして、
力蔵の
後ろ
姿を
見送っていました。
良吉の
住んでいる
家はあばら
屋でありました。そして、
良吉は
床の
中に
入ってから、
昼間見たオルゴールや、
飛行機のことなどが
心の
目からとれないで、それを
思い
出して
天じょうを
仰いでいますと、
窓から、はるか
高い
青空に
輝いている
星の
光がもれてきて、ちょうど
良吉の
顔の
上を
照らしているのでありました。
その
星の
光はなんともいえない
美しい
光を
放っていました。
金色のもあれば、
銀色のもある。また
緑色のもあれば、
紫色のも、
青色のもありました。
良吉は、
自分はなんのおもちゃも、また
珍しいものも
持たないけれど、この
空の
星だけは
自分のものにきめておこうと
思いました。そして
毎晩、あの
星の
光をみつめて
寝ようと
思いました。
良吉は、
毎晩、
寝床の
中に
入ると、
窓からもれる
星の
光を
見ていろいろのことを
考えていました。――すると、ある
晩のこと、
不思議にも
窓から、
彼を
手招ぐものがあります。
良吉は
起きていってみますと、それは
文雄でありました。
良吉はあまりのなつかしさに
文雄の
手を
堅く
握りしめました。
「
僕はあの
星の
世界へいっているんだよ、
星の
世界にはもっと
速い、いい
飛行機もあれば、もっといい
音色のする
楽器もあるよ。
今度くるときに
僕は
持ってきて
君にあげるよ。
僕は、いまその
飛行機に
乗ってきたのだ。これから
僕は
毎晩、ここへたずねてくるよ。だから
君はもうさびしがらなくていいよ。」
と、
文雄はいいました。
「ああ、ほんとうに
君は
毎晩遊びにきておくれよ。
僕はさびしくてたまらないのだから。」
と、
良吉は
目から
熱い
涙を
流して、
友の
手にすがりました。しかし
友の
手は
氷のように
冷たかったのです。そして、
顔の
色は、ろうのようにすきとおって
見えました。
良吉は
変わり
果てた
友の
姿が
悲しくて、また
泣いたのであります。
分享到: