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町の真理(3)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 

博物館はくぶつかん


「ねえ、叔父おじさん、上野うえのへまいりましょう。」と、学生がくせいがいいました。
もう、あきで、上野うえのやまには、いろいろの展覧会てんらんかいがありました。
「そうだな、天気てんきがいいから、いってみようか。」
二人ふたりは、いえかけました。そして、電車でんしゃりて、石段いしだんがり、さくらしたあるいて、動物園どうぶつえんほうへきかかりました。いつしかさくらばみかかって、なかに、むしばんでいるのもあれば、かぜもないのに、ちからなくちるのもありました。
「おまえは、光琳こうりんたことがあるか。」と、叔父おじさんは、おいにききました。
「よく、絵画雑誌かいがざっしっている、写真版しゃしんばんたことがあります。」
写真版しゃしんばんでは、うまみがよくわからんが、気品きひんがあるだろう……。」と、叔父おじさんがいわれた。
「なかなか、豪華ごうかでいいとおもいます。」と、学生がくせいこたえました。
「そう、豪華ごうかじゃ。」
二人ふたりは、博物館はくぶつかんまえとおりをあるいていました。
「おまえは、どこへゆくつもりじゃ。」と、叔父おじさんは、まってきかれました。
学生がくせいは、美術館びじゅつかんに、いまひらかれている洋画ようが展覧会てんらんかいたいとおもったのです。
博物館はくぶつかんに、いま光琳こうりんほう一など、琳派りんぱ陳列ちんれつがあるのじゃがな。」と、叔父おじさんは、博物館はくぶつかんもんのあるほうをつえでしました。しかし、そのほうには、人影ひとかげすくなくて、さびしかったのです。そして、青年せいねんわかおんなたちは、うららかなあきひかりびながら、はたっている美術館びじゅつかんほうへと、あとからあとから、つづいたのでした。
ぼく洋画ようがたいのですが、叔父おじさんもごらんなさいませんか。」と、学生がくせいは、いいました。
「なるほど、みんな、そっちへばっかりゆくのう、どんな傑作けっさくがあるのか、おまえのおつきあいをしてみようか。」
叔父おじさんは、博物館はくぶつかんほう名残惜なごりおしそうに、もう一見返みかえったが、ついおいあとからついて美術館びじゅつかんぐちをはいってゆきました。
かえ時分じぶんになって、叔父おじさんは、おもいました。――西洋画せいようがなんて、どこがおもしろいのだろう? そして、博物館はくぶつかんにいい陳列ちんれつがあるのに、にゆかずに、こちらへばかりやってくる――。
たかかねしてるだけのこともないじゃないか。」と、叔父おじさんはいいました。
叔父おじさん、むかしは、いくらよくたって、つめたい墓石はかいしのようなものです。いまのわかひとには、自分じぶんたちとおなかよっています。まあ、自分じぶん姿すがたにゆくのですね。」
「すると、おもしろくないのは、もう自分じぶん姿すがたがどこにもいだせないというわけかな。そうかんがえれば、さびしいがするのう。」
あたましろくなった、ひとのよい叔父おじさんは、ほんとうに、さびしそうにわらいました。

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