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町の天使(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 
少年しょうねんは、それをすようにして、
「おかあさん! ほんとうに、そとぼくんでいたんですよ。うそだとおもったら、てごらんなさい。」と、少年しょうねんはいいました。
「じゃ、わたしてみよう。そして、もしいたら、しかってやろう!」と、母親ははおやはいって、まどから、あちらをました。
「だれもいないじゃないか。おまえはゆめたのだよ。」といって、母親ははおやは、さむいので、障子しょうじをぴしりとめてしまいました。
そのから、少年しょうねん病気びょうきは、いっそうおもくなったので、うちひとたちは、みんな心配しんぱいしたのであります。
少年しょうねんは、まどからのぞいてると、お菓子屋かしや看板かんばんうえにとまっている天使てんしが、ひとりで、あらしのなかあそんでいたのでした。
きみは、いつも真夜中まよなかになると、ひとらないそらんで、ほし世界せかいへいったり、またはやしなかへはいったりしてあそんでいるのだろう……。」と、少年しょうねんはたずねました。
天使てんしは、はずかしそうなかおをしてわらっています。
今日きょうは、そらがよくれて、それにかぜさむいから、つい天国てんごくこいしくなって、んでいました。」と、天使てんしは、こたえました。
少年しょうねんは、あちらのあおそらが、ただなんということなしにしたわしくなりました。それに、うみほうへといってみたくなりました。
ぼくをつれていってくれないか?」と、天使てんしかってたのみました。
ちいさな天使てんしは、しばらくかんがえていましたが、魔術まじゅつで、少年しょうねんちいさくちいさくしてしまいました。
「さあ、しっかりとわたし脊中せなかにおさりなさい。」と、天使てんしはいいました。少年しょうねんは、天使てんししろ脊中せなかにしっかりときつきました。いつしか、あおそらしろくもあいだうようにして、んでいたのであります。
したには、うみが、悲壮ひそううたをうたって、はてしもなく、うねりうねりつづいていました。かぜは、いて、いていました。少年しょうねんせた、天使てんしは、きたへ、きたへとたびをつづけたのであります。
そのうちに、あかしおなかから、一つのうつくしいしままれました。天使てんしは、そのしまそらびまわりました。見下みおろすと、そこには、しろ大理石だいりせき建物たてものが、平地へいちにも、おかうえにもありました。そのさまは、たばかりでも神々こうごうしさをおぼえたのでした。どんなひとがこのしまなかんでいるだろうか? 少年しょうねんは、もしうつくしいひとたちで、自分じぶんあいしてくれるような、やさしい人々ひとびとであったら、自分じぶんはこのしまみたいとおもいました。しかし、そのしまは、こんなふうに神々こうごうしかったけれど、しんとしておとひとつしなければ、またけむりのぼっているところもありませんでした。うえに、あかいところや、しろいところのえるのは、はないているのだとおもわれました。そのうちに、したみちしろ衣服いふくをまとった人々ひとびとが、脇見わきみもせずにあるいていくのがえました。その人々ひとびとは、あまさんが会堂かいどうへゆくときのように、わらいもしなければ、はなしもしませんでした。これをると、からだじゅうにさむけをもよおしましたので、このしまりてみようとはおもわなくなりました。
「あんまりおそくなると、みんなが心配しんぱいするから、もう、かえりたい。」と、少年しょうねん天使てんしにいいました。
ちいさな、うつくしいつばさった天使てんしは、たそがれがたそらのように、すみやかにんで、ふたたびなつかしい、わがえる野原のはらほうへとんできました。
「さあ、ここですよ。」といって、天使てんしがおろしてくれたので、ほっとして少年しょうねんは、ひらきました。
すると、自分じぶんのまくらもとには、心配しんぱいそうなかおつきをした医者いしゃと、あおかおをしたおかあさんと、いもうとと、おとうさんたちがすわって、自分じぶんかおつめていたのでした。
少年しょうねんは、どうしたことかとおもって、不思議ふしぎでならなかったのです。
それから、数日すうじつたちました。少年しょうねん病気びょうきは、いいほうにかいました。医者いしゃは、まゆひらいてわらいました。母親ははおやかおにもはなやかなわらいがかびました。
あいかわらず、あらしは、まどそといて、ゆきすらおりおり、かぜにまじってちてきました。けれど、そんなにふかくはもりませんでした。そのうちに、少年しょうねん病気びょうきはまったくよくなって、元気げんきよく学校がっこうかようことができるようになったのであります。
ある少年しょうねんは、菓子屋かしやまえとおりかかって、天使てんしは、どうしたろうとおもって、あおいでみますと、そこにはありませんでした。おどろいてともだちにいてみますと、いつかのおおきなあらしのとき、ちてこわれてしまったといいました。少年しょうねんは、すこしいくと、みちのはたに天使てんしつばさのかけらがちていたのをつけました。少年しょうねんは、天使てんしが、いよいよ大空おおぞらのぼってしまったのだろうとおもいました。それから、つぎのやすこおったゆきうえわたっていくと、はやしなかあか帽子ぼうしが一つちていたのであります。
――一九二五・一〇――

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