マルは しあわせ
小川未明
マルは かわいい ねこです。まあちゃんが とても かわいがって いました。
「ねえ おかあさん、マルが おしろいくさいよ。」
と、まあちゃんが いいました。
「どうしてでしょう。あんたの はなの せいじゃ ない?」
と、おかあさんは おっしゃいました。
「マルや、ここへ おいで。」
と、まあちゃんは マルを よびました。マルは よろこんで、まあちゃんの そばへ きて、ころがりました。まあちゃんは、マルの あたまを かぎました。
「やっぱり おしろいくさいよ。」
「マル、どうして おまえは、おしろいくさいの?」
なんと きかれても、ねこですから ごへんじが できません。
「きっと、どこか おねえさんの ある おうちへ いって、かわいがられて いるのでしょう。」
と、おかあさんが おっしゃいました。
「どこかしら。」
と、まあちゃんは かんがえました。
「ああ、こして きた あの おうちだよ。」
あくる
「とめ
と、まあちゃんが こえを かけました。
「ええ、いっしょに いきましょう。」
と、かけて きました。
「あそびに いらっしゃい。」
「あんたもね。」
ふたりは なかよしに なりました。
まあちゃんは とめ
「まあちゃん、おはいり。」
と、とめ
「マルが あそびに くる?」
と、まあちゃんが きくと、
「まい
と、とめ
「かわいい ねこね。」
と、おねえさんたちも いいました。マルは みんなに かわいがられて、しあわせだと、まあちゃんは おもいました。