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道の上で見た話_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 

三つのお人形

小川未明


外国人がいこくじんが、人形屋にんぎょうやへはいって、三つならんでいた人形にんぎょうを、一つ、一つにとってながめていました。どれも、おな人形師にんぎょうしつくられた、たましいのはいっているうつくしいおんな人形にんぎょうでした。
一つは、すわっていましたし、一つはっていました。そして、もう一つは、をあげておどっていたのであります。
どれをったらいいだろうかと、その外国人がいこくじんは、ためらっていましたが、しまいに、つつましやかにすわっているのをうことにしました。それをはこにいれてもらうと、大事だいじそうにして、みせからていってしまいました。
のこった、二つの人形にんぎょうは、たがいにかお見合みあわせました。そして、そばに、だれもいなくなると、おはなしをはじめたのです。
「とうとう、あのかたは、いってしまいましたね。」
「わたしたちは、いつまでもいっしょにいたいとおもいましたが、だめでした。このつぎには、だれがさきにおわかれしなければならないでしょうか……。」
二つの人形にんぎょうは、心細こころぼそそうにいいました。しかし、こうなることはわかっていたのです。うつくしい、三つの人形にんぎょうが、はじめて、このにぎやかなまちみせさきにかざられたとき、とお人々ひとびとは、おとこも、おんなもみんないてゆきました。きれいなおじょうさんや、おくさまたちまでが、うっとりととれてゆきました。人形にんぎょうは、なかに、自分じぶんたちほど、うつくしいものはないとおもうとはなたかかったのです。そして、だれでもが、にこやかなかおつきで、やさしいをして自分じぶんたちをながめますので、どこへいってもかわいがられるものとかんがえました。
「どんなひとに、わたしは、つれられてゆきますかしらん。」と、三つの人形にんぎょうは、口々くちぐちにいって、すえのことを空想くうそうしますと、なんとなく、このなかが、あかるく、かぎりなくたのしいところにおもわれたのでした。
「どこへいっても、おたがいのうえらせって、おたよりをしましょうね。」と、お人形にんぎょうたちは、いったのでした。いま、二つになりました。
「あのかたは、外国がいこくへつれられてゆくのでしょうか。」と、おどりながら、一つの人形にんぎょうは、っている人形にんぎょうにいいました。
「そうかもしれません。わたしは、外国がいこくへなど、ゆきたくないものです。けれど、あのかたは、おとなしいから、どこへいってもかわいがられるとおもいます。」
こんなことをはなしていると、ふいに、みせさきへ、むすめさんがちました。そして、じっとふたりをながめていました。お人形にんぎょうは、きゅうに、くちをつぐんでしまいました。
むすめさんは、うちへはいって、っている人形にんぎょうゆびさして、せてくれといいました。それから、それをってよくていたが、
「これをくださいな。」といった。
こうして、二つの人形にんぎょうは、ついにわれていってしまいました。そして、あとには、おどっている人形にんぎょうがただ一つだけのこったのであります。三つの人形にんぎょうは、こうして、べつべつになってしまったので、もはや、おはなしをすることもできなくなりました。
わたしたちのしたしかったおともだちは、どうなったであろう……。」と、三つのお人形にんぎょうは、たがいに、むねのうちでおもうよりほかなかったのです。
 

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