二
別に、また
一人の
若者がありました。
志をたて、
故郷を
出てから、もう
幾年にかなりましたけれど、
目的を
達することができずに、あちら、こちらと
流浪していました。ある
日のこと、
彼は、
疲れた
足を
引きずりながら、さびしい
昔の
城跡を
通ったのであります。すると、
壊れかかった
石垣の
間に、
夕日の
光を
受けて、ぴかぴか
輝いているものがありました。その
光は、なかば
土にうずもれているためか、それほどの
強い
輝きではなかったけれど、
彼の
注意をひくに十
分だったのであります。
「なにが
光っているのだろう?」と、
若者は、その
石垣のそばへ
寄り
添ってみました。そして、
間から
光っているものを
掘り
出すと、
小さなかぎでありました。
「なにに
使ったものだろう……。」と
思いながら、よく
見ますと、それには、3という
番号がついていました。しかし、
不思議なかぎのような
気がして、それをふたたび
捨てることができなかったのです。きっと、このかぎで
開かれる
箱か、なにかがあるにちがいない。もしそれを
見いだしたなら、いま
自分の
抱いているような、すべての
野心は
遂げられるだろうというような
気がしたのでした。
しかし、その
秘密の
箱は、どこにうずもれているかわからなかった。
若者は、その
日から、この
昔の
城跡やこの
付近の
町をたずね
歩いて、
黄金の
箱の
話を
聞き
出そうとしました。この
若者は、なかなかの
智慧者でありましたから、このかぎが、どんな
金で
造られていたかということを、すぐに
見分けることができたのです。そして、このかぎを
使って
開けるほどの
箱は、やはり
黄金で
造られた
箱にちがいない。
黄金の
箱などというものは、そうたくさんあるものでないから、どこかの
倉に
宝物となって、そのまましまってあるか、もしくは、どこかの
地中にうずめられているという
昔話でも、
残っているであろうと
考えたからです。
ただ、このりこうな
若者は、このかぎの
番号が3であったから、まだこれと
同じ
合いかぎが
他にあろうと
思いました。それで、
自分よりすでに
先に、だれかその
箱を
開けてしまうものがないかということを
心配したのでした。
「いくつもかぎを
造ってあるからには、この
箱は、だれにでも、すぐに
発見されるような
場所に
隠してはないだろう。」と
思って、まだそれが
見つからないと
考えたのであります。
若者は、それがために、
熱心に
城の
歴史などから
伝説などをしらべたのでした。