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夕焼け物語(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 

夕焼け物語

小川未明


にんむすめらは、いずれもあまりんでいるうち子供こどもでなかったのです。
あるはるすえのことでありました。むらにはおまつりがあって、なかなかにぎやかでございました。
にんむすめらも、いっしょにうちつれておみやほうへおまいりにゆきました。そうして、あそんでやがてれかかるものですから、三にん街道かいどうあるいてうちほうへとかえってゆきました。
すると、あちらの浜辺はまべほうから、一人ひとりのじいさんが一つのちいさな屋台やたいをかついで、こっちにあるいてくるのにあいました。それはよく毎年まいねんはるからなつにかけて、この地方ちほうへどこからかやってくる、からくりをせるじいさんにていました。
にんむすめらはたがいにかお見合みあって、ひとつのぞいてみようかと相談そうだんいたしました。
「おじいさん、いくらでせるの?」
と、むすめ一人ひとりがいいますと、じいさんはかついでいた屋台やたいろして、わらって、
「さあさあごらんなさい、おあしは一せん。」
といいました。
にん一人ひとりずつその屋台やたいまえって、ちいさなあなをのぞいてみました。すると、それには不思議ふしぎな、ものすごい光景ありさまうごいてました。よくおばあさんや、おじいさんからはなしいている人買ひとかぶねひめさまがさらわれて、白帆しらほってあるふねせられて、くらい、荒海あらうみなかおにのような船頭せんどうがれてゆくのでありました。三にんは、それを見終みおわってしまうと、
「ああ、こわい。かわいそうに。」
と、ちいさなためいきをもらしていいました。
そのとき、じいさんは、三にんむすめらをて、わらっていましたが、
「おまえさんがたは、いずれも正直しょうじきな、おとなしい、しんせつないいだから、わたしがいいものをあげよう。このかみになんでも、おまえさんがたのしいとおもうものをいて、夕焼ゆうやけのした晩方ばんがたうみながせば、れることができる。」
といって、じいさんは三まいあかちいさなかみきれをして、三にんむすめわたしたのでありました。三にんは、それを一まいずつもらってかえりました。
にんむすめらは、みんなの希望のぞみを、そのあかかみきました。一人ひとりは、
「どうかきれいなくしと、いい指輪ゆびわをください。」
きました。一人ひとりは、
「わたしにオルガンをください。」
きました。もう一人ひとりむすめは、かみすくない、ちぢれたでありました。そのむすめは、いたって性質せいしつ善良ぜんりょうな、なさけのふかでありました。彼女かのじょは、んだねえさんのことをおもわないとてなかったのであります。なんでも希望のぞみけば、それをかみさまがきとどけてくださるというものですから、むすめは、そのあかかみに、
「どうかねえさんにあわしてください。」
きました。
にんむすめは、それぞれ自分じぶんらののぞみをいたかみって、ある夕焼ゆうやけのうつくしい晩方ばんがた浜辺はまべにまいりました。きたうみいろさおで、それに夕焼ゆうやけのあかいろながしたようにいろどってうつくしさはたとえるものがなかったのです。
にんはあるいわうえちまして、きれいなたいまいいろくもそらんでいました。むすめらはっているあかかみちいさないしつつんで、それを波間なみまめがけてげました。やがてあかかみ大海原おおうなばらなみあいだしずんでしまって、えなくなったのであります。
にんうちかえって、やがてそのとこについてねむりました。そうして、くるあさいてみますと、不思議ふしぎにも、一人ひとりむすめのまくらもとには、みごとなくしと、ひかった高価こうか指輪ゆびわがありました。また一人ひとりむすめのまくらもとには、いいオルガンがありました。そうして、もう一人ひとりのちぢれむすめのまくらもとには、あかいとこなつそうがありました。そのむすめは、不思議ふしぎおもって、そのはなにわえました。そうして、朝晩あさばんはなみずをやって、彼女かのじょはじっとそのはなまえにかがんで、そのはな見入みいりました。すると、ありありとねえさんの面影おもかげが、その、かがやいたとこなつの花弁はなびらなかるのでありました。
少女おとめは、こえをあげんばかりにおどろき、かつよろこびました。そして、いつでもねえさんをおもすと、彼女かのじょはそのはなまえにきて、じっとながめたのであります。そのねえさんの姿すがたは、ものをこそいわないけれど、すこしもむかしのなつかしい面影おもかげわりがなかったのです。
少女おとめは、毎日まいにち毎日まいにち、そのはなまえにきてすわっておりました。

 


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