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夕焼け物語(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 


またほかの二人ふたりむすめらは、一人ひとりは、うつくしいくしをあたまし、きれいな指輪ゆびわをはめています。一人ひとりは、いい音色ねいろのするオルガンをらしてうたをうたっています。あるのこと、ちぢれ少女おとめは、ともだちにあってみますと、一人ひとりは、うつくしいくしと指輪ゆびわっているし、一人ひとりは、いい音色ねいろのするオルガンをっていますので、なんとなく、それをこころのうちでうらやみました。
彼女かのじょうちかえると、ひとりで、はなまえって、
「ああ、わたしも、あんな指輪ゆびわとオルガンがしいものだ。」
と、ちいさなこえでいったのであります。
このとき、どこからともなく、しろとりんできました。そして、不意ふいにわいているとこなつのはなをくわえて、どこへとなくんでいってしまいました。
少女おとめは、このさまおどろきました。そして、そこにきくずれました。
「ああ、わたしがわるかった、ひとのものなどをうらやんだものだから……かみさまにたいしてすまないことをした。ああ、どうしたらいいだろう。」
といって、してわめきました。けれど、もはやどうすることもできません。
いくらねえさんにあいたいたって、もはや、とこなつのはなはなかったのであります。もう二と、そのはなまえって、なつかしいねえさんのかおることができなかったのです。
少女おとめはどうかして、あのとこなつとおなじいはなはどこかにいていないかとおもって、毎日まいにちのように浜辺はまべさがしてあるきました。浜辺はまべにはいろいろなあおや、しろや、むらさきや、空色そらいろはななどがたくさんにいていました。けれどあのあかいとこなつとおなじいはなつかりませんでした。少女おとめねえさんの面影おもかげおもしては、こいしさのあまりきました。そして、そのくるも、また彼女かのじょ浜辺はまべては、草原くさはらなかさがしてあるきました。
夕焼ゆうやけはいくたびとなく、うみのかなたのそらめてしずみました。少女おとめ岩角いわかどって、なみだながらにそれをながめたのでありました。
あるのこと、彼女かのじょは、いつかあかかみいしつつんでげたいわうえにきて、うみのぞみながら、かみさまにわせて、しずかにいのりました。
「どうぞもう一、あのとこなつのはなをくださいまし。わたしがほかのものをうらやみましたのはわるうございました。どうぞおゆるしください。」
といいました。
すると、夕焼ゆうやけのしたかなたのそらほうから、またしろい一とりんできました。そして、少女おとめのすわっているあたまうえにきて、くわえてきた一ぽんのとこなつのはなとしました。少女おとめはそれをて、ゆめかとばかりよろこんで、これをひろいあげました。それは、いつかにわえておいたはなとまったくおなじでありました。彼女かのじょは、そのはな接吻せっぷんしてさまさまにおれいもうしました。しかし、そのはなにはがなかったのであります。
少女おとめは、せっかくしろとりがくわえてきてくれたはなのないのをかなしみました。けれど、彼女かのじょはどうかして大事だいじにして、いつまでもそのはならさないようにしなければならぬとおもって、かみしていさんでうちかえりました。すると、はなはいつのまにやら、まったくしおれていました。少女おとめはあまりのかなしさに、はなかかえてこえをあげてきました。
みんなは、少女おとめくもので、どうしたのかとおもってはいってきてみてびっくりしました。
「まあ、どうしておまえさんは、まれわったようにかみがたくさんになって、しかもくろくなって、うつくしくなったのか。」
といってさわぎました。
少女おとめはこれをきますと、そんなら自分じぶんすくない、ちぢれたあかいろかみわったのだろうかとおもって、あたまげてれてみますと、なるほど、ふさふさとしてたくさんになっています。これはゆめでないかとおどろきまして、さっそくかがみまえにいってうつった姿すがたますと、くろなつやつやしたかみがたくさんになって、そのうえ自分じぶんかおながら、見違みちがえるようにうつくしくなっていました。少女おとめは、これをると、いままでいていたかなしみはわすれられて、おもわずほほえんだのでありました。
ごろから、このむすめはおとなしい、なさぶかい、やさしい性質せいしつのうえに、きゅうにこのようにうつくしくなったものですから、むら人々ひとびとからはそのますますほめられ、あいされたということであります。

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