二
またほかの
二人の
娘らは、
一人は、
美しいくしを
頭に
差し、きれいな
指輪をはめています。
一人は、いい
音色のするオルガンを
鳴らして
歌をうたっています。ある
日のこと、ちぢれ
髪の
少女は、
友だちにあってみますと、
一人は、
美しいくしと
指輪を
持っているし、
一人は、いい
音色のするオルガンを
持っていますので、なんとなく、それを
心のうちでうらやみました。
彼女は
家に
帰ると、
独りで、
花の
前に
立って、
「ああ、わたしも、あんな
指輪とオルガンが
欲しいものだ。」
と、
小さな
声でいったのであります。
このとき、どこからともなく、
白い
鳥が
飛んできました。そして、
不意に
庭に
咲いているとこなつの
花をくわえて、どこへとなく
飛んでいってしまいました。
少女は、この
有り
様を
見て
驚きました。そして、そこに
泣きくずれました。
「ああ、わたしが
悪かった、
他のものなどをうらやんだものだから……
神さまにたいしてすまないことをした。ああ、どうしたらいいだろう。」
といって、
地に
伏してわめきました。けれど、もはやどうすることもできません。
いくら
姉さんにあいたいたって、もはや、とこなつの
花はなかったのであります。もう二
度と、その
花の
前に
立って、なつかしい
姉さんの
顔を
見ることができなかったのです。
少女はどうかして、あのとこなつと
同じい
花はどこかに
咲いていないかと
思って、
毎日のように
浜辺を
探して
歩きました。
浜辺にはいろいろな
青や、
白や、
紫や、
空色の
花などがたくさんに
咲いていました。けれどあの
赤いとこなつと
同じい
花は
見つかりませんでした。
少女は
姉さんの
面影を
思い
出しては、
恋しさのあまり
泣きました。そして、その
明くる
日も、また
彼女は
浜辺に
出ては、
草原の
中を
探して
歩きました。
夕焼けは
幾たびとなく、
海のかなたの
空を
染めて
沈みました。
少女は
岩角に
立って、
涙ながらにそれをながめたのでありました。
ある
日のこと、
彼女は、いつか
赤い
紙に
石を
包んで
投げた
岩の
上にきて、
海を
望みながら、
神さまに
手を
合わせて、
静かに
祈りました。
「どうぞもう一
度、あのとこなつの
花をくださいまし。わたしがほかのものをうらやみましたのは
悪うございました。どうぞおゆるしください。」
といいました。
すると、
夕焼けのしたかなたの
空の
方から、また
白い一
羽の
鳥が
飛んできました。そして、
少女のすわっている
頭の
上にきて、くわえてきた一
本のとこなつの
花を
落としました。
少女はそれを
見て、
夢かとばかり
喜んで、これを
拾いあげました。それは、いつか
庭に
植えておいた
花とまったく
同じでありました。
彼女は、その
花に
接吻して
神さまにお
礼を
申しました。しかし、その
花には
根がなかったのであります。
少女は、せっかく
白い
鳥がくわえてきてくれた
花に
根のないのを
悲しみました。けれど、
彼女はどうかして
大事にして、いつまでもその
花を
枯らさないようにしなければならぬと
思って、
髪に
差して
勇んで
家に
帰りました。すると、
花はいつのまにやら、まったくしおれていました。
少女はあまりの
悲しさに、
花を
抱えて
声をあげて
泣きました。
みんなは、
少女が
泣くもので、どうしたのかと
思って
入ってきてみてびっくりしました。
「まあ、どうしておまえさんは、
産まれ
変わったように
髪がたくさんになって、しかも
黒くなって、
美しくなったのか。」
といって
騒ぎました。
少女はこれを
聞きますと、そんなら
自分の
少ない、ちぢれた
赤い
色の
髪の
毛が
変わったのだろうかと
思って、
手を
頭に
上げて
触れてみますと、なるほど、ふさふさとしてたくさんになっています。これは
夢でないかと
驚きまして、さっそく
鏡の
前にいって
映った
姿を
見ますと、
真っ
黒なつやつやした
髪の
毛がたくさんになって、そのうえ
自分の
顔ながら、
見違えるように
美しくなっていました。
少女は、これを
見ると、いままで
泣いていた
悲しみは
忘れられて、
思わずほほえんだのでありました。
日ごろから、この
娘はおとなしい、
情け
深い、
優しい
性質のうえに、
急にこのように
美しくなったものですから、
村の
人々からはその
後ますますほめられ、
愛されたということであります。