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雪消え近く_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 

雪消え近く

小川未明


はやゆきえて、かわいたつちうえあそびたくなりました。ゆきしたにかくれているつちいろがなつかしいのであります。吉郎よしおは、自分じぶんいえまえだけでもはやゆきをなくそうとおもいました。それであさからそと木鋤こすきで、ゆきをわってはそれをちからいっぱいとおはたけほうへとなげていました。
がほかほかとたってきました。しじゅうからが、はやしいています。そらは、うすあおれて、なんとなく気持きもちのびとするいいお天気てんきでした。
吉郎よしおさん、ゆきをわっているの。」と、となりのとめさんがあかいえりきのなか半分はんぶんかおずめながら、そばへきていいました。
「はやく、ゆきがなくなるといいね。そうすれば、いろんなことをしてあそべるだろう。」と、吉郎よしおは、やすめて、こたえました。ひたいぎわには、はたらいたので、あせがにじんでいました。
「おまりをついたり、おにごっこをしたりしてあそべるわね。」
「だから、はやく、ぼくゆきそうとおもっているのさ。」
わたしも、おてつだいをしましょうか。」
「とめさんは、自分じぶんいえまえゆきせばいいだろう。」
「じゃ、そうするわ。」
とめさんは、おうちかえっていきました。するとまもなく、とめさんは、あに年雄としおさんと二人ふたりで、支度したくをしてきました。年雄としおさんはかたゆきをわるのに、てつのシャベルをち、とめさんは、ちいさな木鋤こすきっていました。
「やはり、吉郎よしおさんのおうちのほうからやっていきましょうよ。吉郎よしおさんのおうちのほうがすんだら、わたしいえのほうをして、んであそべるようにしましょうよ。」と、とめさんが、いいました。
吉郎よしおくん、それがいいだろう。」と、年雄としおさんが、いいました。
「ああ、そうしよう。三にんでやれば、今日きょうじゅうに、ここだけはできるからね。」
にんは、ゆきをわって、それをなげるのに夢中むちゅうでありました。はやくはるがきて、つちうえあそべるたのしみをかんがえるからです。
昼過ひるすぎになると、そらがすこしくもりました。そして、かぜさむくなって、さらさらとゆきちてきました。
「あっ、またってきたよ。」と、年雄としおそら見上みあげました。
「せっかく、ゆきをなくしたのに、つまらないわ。」
としちゃん、じきにれるよ。あっちのほうあかるいだろう。」
吉郎よしおは、みなみから、西にしへかけて、雲切くもぎれのしているそらしました。
「だって、きたほうは、くろいじゃないか。」
そこへ近所きんじょのおじさんが、ふところをしてとおりかかりました。
「おじさん、またるだろうか。」と、吉郎よしおがききました。
「もうってもたいしたことはない。みなみあかるいから南風みなみかぜそうだ。そうすれば、どんどんえてしまうからな。」と、おじさんは、いいました。三にんは、かお見合みあって、にっこりわらいました。おじさんのったあとです。
「さあ、みんなよくはたいてくれましたね。おいしいおしるこができたから、はいっておべなさい。」と、吉郎よしおくんのおかあさんが、戸口とぐちてきて三にんをおびになりました。
「うれしいな、はやくいってべよう。」
にんは、シャベルも、木鋤こすきも、ゆきうえへほうりしておうちはいりました。三にんは、おしるこもうまかったが、それよりかおおきなみかんが、なによりうれしかったのです。
おおきなみかんね。」
「こんなおおきいみかんのなっているところへいってみたいな。」
わたし、ごほんで、みかんのなっているおやまたわ。」
なんか、つまらないよ。」
とめさんは、みかんを自分じぶんのほおにしあてて、なかなかべようとしませんでした。
そのうち、ひかりがぱっとまどしました。へやのうちきゅうあかるくなりました。三にんは、すぐにそとしていきました。
かげろうが、軒下のきしたで、つくって、おどっていました。すぎのえだたるかぜきゅうになまあたたかくかんぜられたのです。そしてみなみそらから、西にしそらへかけて山々やまやまいただきのあたりが、いっそううすあかるくオレンジいろになっていました。
「おじさんのいったように、ばん南風みなみかぜるんだぜ。」と、年雄としおさんが、いいました。
「そうすれば、はるがくるのだ。」
このとき、盲目もうもく母親ははおやきながら、十五、六のむすめが、雪道ゆきみちあるいていきました。母親ははおや三味線しゃみせんかかえていました。旅芸人たびげいにんです。
くらくなったらどこへまるんでしょう。」と、とめさんが、いいました。
「どこへまるんだろうな。」と、吉郎よしおくんも、見送みおくっていました。

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