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雪くる前の高原の話(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3335
 
はなは、季節きせつうつりとともに、だんだんすくなくなり、ってゆきました。はちはレールのうえにとまって、ひかりびて、じっとしていることもありました。
「もう、じきにトロッコがきますよ。」と、レールは、ねむっているはちをこしてやったこともあります。はちは、りました。そらいろ青々あおあおとしてれていました。はちは、どこへいっても自由じゆうであったのだけれど、やはり、このあたりからりませんでした。
たかやまには、あきがきて、はやくも冷気れいきのたつのが、ずっとさとのほうよりははようございました。いろいろのむしが、自分じぶんたちのうえかなしんでいています。けれど、はちは、その地面じめんをはっているむしのようにはかなしみませんでした。どこへなりとんでゆこうとおもえばいけたからです。けれど、やはり、かれは、古巣ふるすのかかっているところをこいしがっていました。
なつのはじめの時分じぶんには、どんなに、自分じぶんたちはたのしかったろう。このあたりは、自分じぶんたちのほがらかにうたうたこえでいっぱいであった。そして、むらさきや、あかや、あおや、や、しろうつくしいはなたちは、いずれも自分じぶんたちの姿すがたをほめはやしたものだ。そして、すこしでもながく、自分じぶんのところにいてもらいたいとねがったものだ。しかし、もう、自分じぶんたちの仲間なかまってしまった。うつくしいはなは、とっくのむかしに、なくなってしまった。けれど、なんで、もう一ああいうことがこないといえよう……。はちには、こんなことも空想くうそうされたのでした。
太陽たいようが、だんだん方向ほうこうえて、レールのうえがかげり、うえつめたくなって、したえだには終日しゅうじつたらないことがあるようになってから、かれは、たかえだにからんだ、つたのまっていたのでした。いつしか、そのつたのもまたあかいろづいてきたのであります。しかしやさしいつたのは、自分じぶんのやがてることもわすれて、つねに、はちをなぐさめていました。
「もう、じきに太陽たいようがりますよ。そうするとあたたかになります……。」と、つたのはいいました。
であるのに、たえず、すぎの若木わかぎは、周囲しゅういくさや、や、むしなどを冷笑わらっていたのです。
おれは、ひとりたたかわなければならない。みんなが、いくじなくれたり、ったり、んだりしてしまったとき、吹雪ふぶきあらしかってさけび、たたかわなければならない。」と、ほこがおにいっていました。
しかし、だれも、それにたいして反抗はんこうするものはなかったのです。すべて、すぎの若木わかぎのいうとおりだったからです。
石炭せきたんまって、はちがじっとしていると、
わたしたちといっしょにまちへゆきませんか。わたしたちはどうせ工場こうばへつれてゆかれるだろうけれど、あなたは、まちへいったら、自由じゆうにどこへでもんでゆきなさるがいい。まちは、にぎやかであたたかだということをいています。わたしたちもまたまちへはじめてだが、そこはあかるくていろいろなうつくしいものがあるということです……。わたしたちといっしょにゆきませんか。」と、石炭せきたんは、はちにかっていいました。
はちはかんがえました。自分じぶんは、あまりさむくならないうちに、かく場所ばしょいださなければならないが、この野原のはらなかにしようか、それとも石炭せきたんがゆこうとしているまちにしようか、もっとかんがえてみなければならない。としとった仲間なかまは、ふゆゆきのあるあいだを、てらのひさしのしたかくつくってはいっていたというから……このあたりは、ゆきふかもって、適当てきとう場所ばしょいだされないかもしれない。なるほど、石炭せきたんのいうように、このまままちへゆくとしようかと、うつくしいつばさふるわしてはちはかんがえていました。
このとき、トロッコのうえっていた労働者ろうどうしゃは、はちにをとめると、
「このへんがあるとみえて、いつかおれあししやがった……。ころしてくれようかな。」といって、あしげて、はちをみつぶそうとしました。しかし、はちはあぶないところをのがれてちました。そのあとで、石炭せきたんがとばっちりをって大騒おおさわぎをしていました。
はちは、レールについて、もとの場所ばしょかえろうとおもいました。そこにはやさしい、つたのっていたからです。
はちは、レールについてんでくるうちに、レールがくるしそうに、げて地面じめんをはっているのに、はじめてがついて、
「なんで、あなたは、そんなようすをしているのですか。」と、はちは、レールにたずねました。レールは、ものすごいつきで、はちを見上みあげて、
わたしが、こうして、くるしんでいる姿すがたは、いまはじめてがついたのですか。もう、ながあいだここにうめいている。それも、いぼれたくぎめがしっかりとわたしからださえていてはなさないからだ……。」と、うらみがましくこたえました。
はちは、こんなつよそうにえるレールにも、こうしたなやみとくるしみとがあることを、はじめてったので、なおも子細しさいに、そのようすをとどけようとおもって、くぎがさえているところへいってみました。
なるほど、あかくさびた、いぼれたくぎが、いっしょうけんめいにレールをさえつけているのでした。はちはそこへんできてとまると、
「なぜ、そんなにあなたはレールをさえつけているのですか。」と、たずねたのであります。
おれ人間にんげんからいいつかったことをしているのさ。」
「しかし、あなたとレールとは、もとおなじ一ではありませんか。兄弟きょうだいといってもいいでしょう。」と、はちは、おな鋼鉄こうてつでできていたから、そういったのです。
「しかし、おれ人間にんげんからいいつかったことをわすれて、はなしたら、なにかわる結果けっかになりはしないかと心配しんぱいするのだ。」と、あかくさびたくぎがいいました。
「だが、あなたは、だいぶとしをとっていられますから、すこしぐらいやすまれたって、だれも不思議ふしぎとはおもいますまい。」と、はちはこたえたのであります。
さびたくぎは、なるほどというようなかおつきをして、はちのいうことをいていました。
はちが、やがて、あかいつたのうえにもどってきました。つたのは、そら見上みあげながら、
「また、あらしになりそうですね。」と、心配しんぱいそうなかおつきをしていました。
ひとり、すぎの若木わかぎは、傲慢ごうまんに、つよそうなことをいっていばっていたのであります。
あかさびのしたくぎは、はちのいったことから、ついがゆるんでレールをさえつけていたはなしました。すると、レールは、すかさずに、げていたからだばしたのです。このとき、トロッコが、ほかの石炭せきたんんでやまからくだってきました。つたのうえにとまっていたはちは、先刻せんこく石炭せきたんは、いまごろどこへいったろう……。まち工場こうじょうへは、まだくまいとおもっていた瞬間しゅんかんに、トロッコが脱線だっせんして、異様いようおとをたてたかとおもうと、こちらへすべってきてすぎの若木わかぎのかたわらにひっくり぀�しかし、おれ人間にんげんからいいつかったことをわすれて、はなしたら、なにかわる結果けっかになりはしないかと心配しんぱいするのだ。」と、あかくさびたくぎがいいました。
「だが、あなたは、だいぶとしをとっていられますから、すこしぐらいやすまれたって、だれも不思議ふしぎとはおもいますまい。」と、はちはこたえたのであります。
さびたくぎは、なるほどというようなかおつきをして、はちのいうことをいていました。
はちが、やがて、あかいつたのうえにもどってきました。つたのは、そら見上みあげながら、
「また、あらしになりそうですね。」と、心配しんぱいそうなかおつきをしていました。
ひとり、すぎの若木わかぎは、傲慢ごうまんに、つよそうなことをいっていばっていたのであります。
あかさびのしたくぎは、はちのいったことから、ついがゆるんでレールをさえつけていたはなしました。すると、レールは、すかさずに、げていたからだばしたのです。このとき、トロッコが、ほかの石炭せきたんんでやまからくだってきました。つたのうえにとまっていたはちは、先刻せんこく石炭せきたんは、いまごろどこへいったろう……。まち工場こうじょうへは、まだくまいとおもっていた瞬間しゅんかんに、トロッコが脱線だっせんして、異様いようおとをたてたかとおもうと、こちらへすべってきてすぎの若木わかぎのかたわらにひっくりかえったので、すぎの若木わかぎ石炭せきたんされてがってしまいました。ふいのできごとにおどろいて、はちは前後ぜんごわすれて、かなたのおおきな、はんのきのところまでげてしまいました。
そのばんしろに、この高原こうげんには、ゆきったのであります。
 

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