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雪の降った日(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3334
 

雪の降った日

小川未明


 

ゆきりそうなさむ空合そらあいでした。さなければ、かぜかずに、灰色はいいろくもが、はやしうえにじっとしていました。のついていないけやきのほそえだけむってえるので、くも区別くべつがちょっとわからないのでありました。
しそうなそらね。」と、かよちゃんがいいました。
「ほんとうだわ。わたし、こんながきらいよ。」と、ふところをした竹子たけこさんも、いいました。おとこたちとはなれて、二人ふたりは、ならんでそらをながめていました。
「もっとなにかっておいでよ。がなくなってしまうじゃないか。」
しげちゃんのにいさんが、ぼうさきで、たきをつついていました。あおけむり自分じぶんほうながれるので、かおをしかめています。
としちゃんは、はしっていって、どこからか米俵こめだわらいたのをげてきました。はらててあったとみえて、たわらしもでぬれていました。
った、った。そんなのをれると、すぐえてしまう。よくここで、かわかしてからでないとな。」と、ブリキのおじいさんがいいました。おじいさんは、自分じぶんくずをひろってきました。このあいだまで大工だいくたちが、ここで他所よそてるいえ材木ざいもくんでいたのでした。ここは、町裏まちうらはらっぱであります。
まだ、お正月しょうがつなので、子供こどもたちは、ここへきて、たこをげたり、羽根はねをついたりしてあそんでいました。
「ごらんよ、おんながあんなことをしている。乞食こじきなんだね。」と、さきのついたとしちゃんが、いったので、たきにあたっているものが、みんなそのほうきました。一人ひとりおんなが、ながいはしのようなもので、ごみをかきかえして、ちているや、新聞紙しんぶんしのようなものをうえへひろげて、けていました。
「ああ、乞食こじきだね。」と、よしちゃんが、いいました。
「いや、乞食こじきじゃない。あちらにくるまいてある。」と、おじいさんが、いいました。なるほど、手車てぐるまいてあって、そのくるまうえにかごがっていました。
「なんなの、おじいさん。」
「そうだな。あれは、貧乏びんぼうのくずさんだ。」
としちゃんは、くるまのそばに五つか六つのおとこが、ぼんやりとっているのをました。その子供こどもは、くつしたもはかずに、ぼろぐつをはいていました。そして、母親ははおやのところへはいこうとせずに、そらっていたとびをているようであります。
「なにをさがしているんだろうか。」
「あれは、かみや、かなくずや、こわれたびんのようなものをけているのさ。」
「あんなも、っていくのかしらん。」
「きっと、いえっていってべるんだよ。」
きたないなあ。」
「おじいさん、あんなごみなんかおかねになるの。」と、としちゃんが、ききました。
「いま、てつくずでも、かみくずでも、になるのだよ。あのかみは、またすきなおして、おまえたちの使つかっているような鼻紙はながみや、もっとりっぱなかみになるのだし、てつくずは、かして、またいいてつになるのだ。」と、おじいさんは、こたえました。
しげちゃんは、いしひろって、おんなほうかってげようとしたのを、にいさんが、
「およしよ。そんなことをして、あぶないじゃないか。」といって、しかりました。
「ねえ、おじいさん、あんなくずが、くつなんかをかっぱらうのだろう。ひとていないとねえ。」と、しげちゃんがいいました。
「そういうことをするわるいものもいるが、そんなことをしない、いいひともたくさんある。」と、おじいさんは、さっきのぬれたたわらが、もうえそうになったので、おはなしよりもそのほうにられていました。たわらえはじめると、おじいさんは脊中せなかをあたためたり、まえほうをあぶったり、からだをぐるぐるといろいろにまわして、すこしでもよくあたたまろうとしていました。
「あんなをみんなかごのなかれてしまったよ。きっと、いえへいってあらってべるのだね。」
としちゃんは、そんな生活せいかつをするものをさげすむようにいいました。ちいさな子供こどもは、母親ははおやが、くるまのところへもどってきたので、よろこんでがっていました。としちゃんは、きっと子供こどもが、おまえはここにっておいでといわれたので、母親ははおやのそばへいけずにながあいだくるまのあるところにたされていたのだとおもいました。
「そうすると、かわいそうだな。」と、こころなかで、おもっていると、
「おまえたちは、みんな、まだこまったひとのことは、わからないだろうからな。」と、おじいさんが、いいました。
ゆきや、こんこん、あられや、こんこん、っておくれ。」
ゆきってきたわ。」
かよちゃんと、竹子たけこさんが、かけしました。
「さあ、おうちはいろう。」と、おじいさんが、まずたきのそばからはなれると、しげちゃんのにいさんが、つづいてり、みんながばらばらになって、おうちほうはししました。はや、はらっぱのうえしろくなっていました。
としちゃんは、ばんに、おかあさんや、おねえさんと、かるたをとっていました。
「きよがいると、おもしろいのだがなあ。」と、おもいました。女中じょちゅうのきよは、母親ははおや病気びょうき田舎いなかかえったのです。
「おかあさん、きよは、いつくるの?」
母親ははおやがよくならなければわかりませんね。あのも、かわいそうです。いろいろ心配しんぱいして。」と、おかあさんは、おっしゃいました。
このあいだは、おとうとに、おくってやる為替かわせ手紙てがみといっしょにとしたのです。その母親ははおや病気びょうきというらせがきたので、きよは、おどろいて田舎いなかへたったのでした。
しかし、こちらへきてから二ねんあいだに、自分じぶんちからでこしらえた着物きものや、羽織はおりをきて、きちんとしてかえっていくときのようすは、はじめて田舎いなかから、行李こうりってきたときの姿すがたとは、まったく別人べつじんのようでありましたので、
「どこのおじょうさんかとおもわれますよ。」と、おかあさんが、からかいなさると、きよは、さすがにかおあかくしましたが、それでも、うれしそうでありました。
「おかあさん、おめかしをしては、いけませんねえ。」と、そのとき、としちゃんは、いったのです。すると、おかあさんは、
「いいえ、きよは、よくつとめて、おとうさんにも、おかねおくっていますし、なかなか感心かんしんですよ。自分じぶんちからでみなりをつくることは、わるいことではありません。」
また、きよにかっては、
「よく、おっかさんの看病かんびょうをしておあげなさい。」と、おっしゃいました。
夜行やこうでたった、きよからは、くとすぐに手紙てがみがまいりました。
はは病気びょうきは、たいしたことがありませんからご安心あんしんください。はやかえりたいとおもっています。そのときは、ぼっちゃんに、おとうとあきのころ、やまひろったしばぐりをもってまいります。」と、いてありました。
かるたのあとで、おかあさんは、おしるこをこしらえてくださいました。
「きよがかえるころには、もうおもちが、なくなってしまいますね。」と、おねえさんが、いいました。
「きよに、おしるこをべさせてやりたいな。」と、としちゃんがいいました。
これをおききなさると、おかあさんは、二人ふたり子供こどもが、ほかのひとにもやさしいのを、さもおよろこびなされるように、子供こどもらのかおていらっしゃいましたが、
「きよは、田舎いなかで、おもちをたくさんべてきますよ。」と、おっしゃいました。

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