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笑わなかった少年(2)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3445
 こういって、お母かあさんは、また目めをおふきになりました。
「だが、お母かあさん、笑わらったやつもあったけど、笑わらわないものだってありましたよ。笑わらったやつは、こんどなぐってやるのだ。」と、小田おだが、いいました。
「そんなことをしてはいけません。おまえが、乱暴らんぼうだから、みんなが、こんなときに笑わらうのです。どちらが正ただしいかわかるときがありますから、けっして、そんな乱暴らんぼうをしてはいけません。」と、お母かあさんは、おいましめになりました。
小田おだは、考かんがえていましたが、
「ねえ、お母かあさん、いつか、家うちへ遊あそびにきたことのある、北川きたがわくんなどは、だまってきいていましたよ。」といいました。
「よくもののわかる、おりこうなお子こさんですね。」と、お母かあさんは、いって、また、涙なみだをおふきになりました。
それから、二、三日にちしてからです。小田おだは、学校がっこうへゆく途中とちゅうで、あちらからきた、北川きたがわくんに出遇でくわしました。彼かれは、今年ことしから学校がっこうに上がったという、小ちいさな弟おとうとといっしょでありました。
「おはよう。」
「いっしょにいこうよ。」
たがいに、声こえをかけ合あって、三人にんが、並ならんで歩あるきました。そして、学校がっこうの門もんをはいったときであります。
「ひとりで、パンが買かえる?」と、北川きたがわくんが、立たち止どまって、やさしく弟おとうとの顔かおをのぞくようにして、きいていました。
小ちいさな弟おとうとは、だまって、うなずきました。
「もし、お金かねを落おとしたら、兄にいさんのところへいってくるのだよ。」と、北川きたがわくんは、いっていました。
兄弟きょうだいを持もたない小田おだは、この仲なかのいい二人ふたりのようすを見みて、心こころからうらやまずにはいられなかったのです。
「僕ぼくたち、お母かあさんが、かぜをひいてねているので、今日きょうは、弁当べんとうを持もってこなかったんだ。」と、北川きたがわくんが、小田おだに向むかって、話はなしました。
そのとき、小田おだは、また自分じぶんのお母かあさんのことを思おもわずにはいられませんでした。
「いまごろ、お母かあさんは、いっしょうけんめいで、お仕事しごとをなさっているだろう……。」
そう思おもうと、お母かあさんの、お仕事しごとをなさっている姿すがたが、目めにありありと浮うかんできて、しぜんと熱あつい涙なみだがわいてくるのでした。
その日ひ、ちょうど、お昼ひるの前まえの休やすみ時間じかんでありました。北川きたがわの弟おとうとさんが、しきりに兄にいさんをさがしているのを見みつけましたから、小田おだは、大おおきな声こえで、
「北川きたがわくん!」と、呼よんで、知しらせたのです。
北川きたがわは、すぐに走はしってきました。そして、弟おとうとのそばへいって、なにかいうのをきいていましたが、
「だから、気きをつけるようにいったじゃないか。」という声こえがきこえたかと思おもうと、小ちいさな弟おとうとは、しくしくと泣なきだしました。
小田おだは、弟おとうとが、パンのお金かねを落おとしたのだなと悟さとりました。しかし、いってたずねるまもなく、
「泣なかんだって、いいのだよ。」といって、北川きたがわが、自分じぶんの持もっているお金かねをやって、弟おとうとの頭あたまをなでると、弟おとうとは、泣なくのをやめて、急きゅうに、元気げんきづいて、あちらへ駈かけ出だしてゆきました。
「なんて、朗ほがらかな兄弟きょうだいだろう。」と、小田おだは、この有あり様さまを見みて、感心かんしんしました。
そのうちに、話はなす時間じかんもなく、ベルが鳴なってお教室きょうしつに入はいり、授業じゅぎょうがはじまりました。
いよいよお昼ひるになって、みんながお弁当べんとうを食たべるときとなったのです。ひとり、北川きたがわだけは机つくえに向むかって、宿題しゅくだいをしていました。
小田おだには、なにもかもわかっていました、自分じぶんが、パンを食たべずに、弟おとうとにパンを買かってやったことも。この心こころがあればこそ、このあいだも、自分じぶんの話はなしをまじめにきいていてくれたのだと、小田おだは、思おもいました。
「これが、ほんとうの同情どうじょうというものだ。」
そう小田おだは悟さとると、自分じぶんの行為こういまでが顧かえりみられて、これから、自分じぶんも、ほんとうの正ただしい、強つよい人間にんげんになろうと決心けっしんしたのでした。
 

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